沖縄知事選は冷静な議論、判断を
沖縄県の翁長雄志知事が8日午後、死去した。共産党などの左派勢力、地元反対派などでつくるオール沖縄のリーダー、また象徴として、名護市辺野古での米軍飛行場建設に対して先頭に立って反対してきた翁長氏だけに、反対派の中には来る知事選を〝弔い選挙〟と位置づける人々も出てくるだろう。
しかし、こうした状況で迎える知事選であるからこそ、沖縄県の将来像、県経済の活性化、県民の福祉向上、交通網の整備といった辺野古問題以外も含めた冷静な議論をし、県民が正しい選択ができる、そうした環境を整えることが、まずは残された人々の責務だろう。
翁長氏はまさに、最後の死力を振り絞って、辺野古での新飛行場建設に伴う名護市沿岸部の埋め立て承認を撤回すると表明した。しかし、今回の撤回表明をめぐっては、県庁内部にも「環境保全策が不十分なことなどを理由として撤回し、その後の法廷闘争を勝ち抜くのは困難」とする見方が少なくなかったのが現実で、実際、翁長氏は周囲がやきもきするほど、撤回表明を先延ばしにしてきた。
しかし、過激派や共産党などを中心とした反対派の突き上げが厳しく、7月15日からは承認撤回を求めて、反対派が県庁前で座り込みをするなど圧力を掛けた。その結果、翁長氏も撤回を表明するにいたったのだ。
翁長氏が行った撤回表明は、今後、新たな知事の判断、つまり知事選の結果を待つことになるだろうが、だからといって知事選を辺野古問題一色にしてはいけない。翁長知事の〝弔い合戦〟と位置づけ、辺野古の飛行場建設の是非だけが争点になるようなことになれば、それは県民の最大の不幸となる。
アジアが発展する中で、東アジア市場を視野に入れた県経済の構築やIotなど新技術を活用した産業育成、一層の観光客の誘引やそのための港湾整備、雇用対策や子供の貧困対策、医療の一層の充実、県内交通網の整備など、課題は山積している。強力なリーダーシップを発揮してそれらを実行していくのが、地方行政のトップとしての知事の役割だ。
これから活発になる知事選において、もし〝弔い選挙〟の掛け声のもとに、このような多面的な課題から目をそらせ、あたかも辺野古問題が県政の唯一無二の課題と誤解させるような人々がいるとすれば、それこそ県民の生活を考えない似非民主主義者なのだろう。
経済の活性化を図り、沖縄県の発展と県民生活の向上を着実なものとし、普天間飛行場の危険性を一刻も早く除去することで基地周辺の人々の安心と安全と確保することが、次の沖縄県知事に課せられた使命である。