米朝対話だから普天間必要なしとの暴論
琉球新報が21日付け朝刊に「知事選一騎打ちへ 正々堂々正面から論戦を」との社説を掲げた。これも驚くべき内容の社説だ。
社説は「知事選の最大の争点は前回と同様、辺野古新基地建設の是非となる」と、相変わらず、沖縄には米軍普天間飛行場の移設である名護市辺野古での飛行場建設しか課題がないかのような書きぶりだ。地元メディアとして、地元の様々な課題に目をつぶるとは、なんとも理解しがたい。
それは措くとして、社説は続けて「ただ、4年前と状況は異なる。辺野古沖の埋め立てに向けた護岸整備が進み、現場は緊迫している。政府は土砂投入を、県は埋め立て承認撤回を、どの時期に実行するか、互いの腹を探る神経戦を繰り広げている」と書いているが、この点は事実だからいいだろう。
問題は、次の一文だ。「新基地建設の根拠の一つとされてきた北朝鮮情勢も大きく変わった。翁長知事は埋め立て承認撤回を表明した会見で、朝鮮半島の非核化に向けた米朝対話が進んでいることを挙げ、20年以上も前に決定された建設計画を見直さず強引に推し進める政府の姿勢は『到底容認できない』と批判した。情勢の変化がどう影響するかも注目点だ」と書いている。
確かに現在、米朝間で北朝鮮の非核化について交渉が行われている。しかし、その交渉の行方はまったく不明だ。国際社会はその行方を固唾をのんで見守っている状況だ。
しかし、固唾をのんで見守っているからと言って、北朝鮮へのスタンスを国際社会が変えたわけではない。国連の北朝鮮経済制裁は依然として継続している。米国の独自制裁も続いている。
単に、米朝首脳が会談したからと言って、北朝鮮情勢が大きく変わったと社説で指摘するのは、辺野古建設阻止ありきだからと思われても仕方ないだろう。米朝対話が始まったから新飛行場が必要ないというのは、あまりにお粗末で短絡的な考えだ。
もっとも、これは翁長氏の発言で、それを紹介した部分なのだが、お粗末で短絡的な発言を社説に引用するメディアの見識はもちろん問われなければならない。
いずれにしても、辺野古飛行場は対北朝鮮のために新たに建設するものではなく、米軍普天間基地の代替施設である。
社説は「(佐喜真淳氏と玉城デニー氏の)両候補は姿勢を鮮明にし、正面から堂々と論戦を戦わせてほしい」としている。この社説のように、よしんば北朝鮮情勢が変わったから必要ないという暴論が出るのであれば、20年前に比べ中国のアジア進出が大きく変わったことも議論されなければならない。