147連勤が激務と思わないメディアの貧困な想像力
安倍首相が4日ぶりに公務を再開した19日、記者団に「体調管理に万全を期すために、おととい検査を受けた。これから再び仕事に復帰して頑張っていきたい」と述べ、普段通りの仕事をこなした。今回の首相の検査をめぐっては政界やメディアなどからさまざまな憶測が飛んだが、中には首相の仕事に対する想像力すら働かせることができないメディアもあるなど〝無責任解説〟が目立った。
「あなた(新聞記者)も147日間休まず働いてみたことありますか? ないだろうね、だったら意味分かるじゃない。140日休まないで働いたことないんだろう。140日働いたこともない人が、働いた人のこと言ったって分かんないわけですよ」。これは、安倍首相が検査したことを受けて麻生財務大臣が語った言葉だ。新型コロナウイルス感染症という未曽有の事態に直面し、ひと時も休むことができなかった首相の激務ぶりを説明したわけだ。
政府の対策、対応について事実に基づいて評価されることはほとんどなく、少しの誤りがあったら過大に指摘する。そんな毎日を続けたら誰だって疲労が蓄積するだろう。
しかし、それすら理解できないメディアもある。「休日勤務の64%が2時間以下 安倍首相〝147連勤〟の正体」との見出しで記事をWEB配信したのが女性週刊誌の「女性自身」だ。
記事は、1月26日からの休日の首相の執務時間を調査、「福島に出張中の3月7日(土)と、国会が開催された4月29日(水・昭和の日)を除いた休日47日の1日あたりの平均執務時間は123.1分、およそ2時間だった。最長の勤務時間を記録したのは、緊急事態宣言の延長が行われた5月4日(月・祝)の約6時間(365分)、最短だったのが“147連勤”の初日である1月26日(日)の30分だった」などと指摘。
その上で「私邸での電話対応など、首相動静に反映されていない執務もあるかもしれない。だが、日本の“残念な働き方”からみるに、安倍首相の“勤務状況”はことさら特殊なものではないのかもしれない……」などと結論付けている。
この「女性自身」のように仕事を「勤務時間」でしか評価できず、「大した仕事量ではない」などと思っているとしたら、それはまさに日本企業で過労を見過ごす上司のようなものではないか。ましてや、首相はさまざまな判断や指示もしなければならない。
首相はもちろん企業でもトップは孤独なのだ。「女性自身」の記者はそれがストレスになることすら想像できないのだ。ましてや体調を崩した一国の首相に対する気遣いや配慮などまったくないのだ。
もっとも配慮がないのはメディアだけではない。首相の検査を受けて、共産党の小池晃書記局長は記者会見で「心配するような状況ではないことを願っている」といいながらも、「(記者)会見も国会もやっていないからお休みになる時間はあったのではないか」と皮肉っている。メディアも政治家もこうした際に品位が分かるというものだ。
(terracePRESS編集部)