県民投票武器にする玉城知事
沖縄県の新知事の玉城デニー氏が記者会見で、米軍普天間飛行場の名護市辺野古の米軍キャンプシュワブへの移転について改めて反対することを表明した。玉城氏は4日の初登庁後の会見の冒頭「普天間の閉鎖・返還、新基地建設阻止に全身全霊で取り組む。新基地建設阻止に全身全霊で取り組む」などと述べたという。
辺野古の代替施設建設を巡っては、沖縄県はすでに辺野古沿岸部の埋め立て承認を撤回しているが、これに対し政府は法的措置をとるとみられている。
翁長雄志前知事がすでに埋立て承認を取り消し、これが最高裁で違法と判断されており、今回も政府が法的措置をとれば、沖縄県の判断は早晩、司法で違法と判断されるだろう。
しかし、司法が撤回を違法と判断したからと言って、辺野古の代替施設の建設が進む見通しは立っていない。
玉城氏は記者会見で、来年2月に期限が迫る「普天間飛行場の5年以内の運用停止」に関し「辺野古移設とは関係なく早急に実現すべき」と強調している。
普天間飛行場の運用停止は、仲井真弘多元知事が政府に要望したもので、政府は「沖縄県から2014年2月から5年をめどとするとの考え方が示されており、政府としては、このような沖縄県の考え方に基づいて取り組むこととしている」としている。
しかし、翁長前知事の埋め立て承認を取り消しや今回の撤回など、普天間飛行場の移設を巡る状況が変化していることは間違いなく、運用停止が困難になっているのが実情だ。
それは当然だろう。普天間飛行場の返還と辺野古の代替施設は一体であり、代替施設完成の見通しが立っていない中で、運用停止は不可能だ。
もちろん、玉城知事はそのような状況は織り込み済みで、普天間飛行場の運用停止が実現しないと考えているのだろう。
そこで玉城氏が、政府への対抗策として実施するのが県民投票ということになる。玉城氏はメディアのインタビューに対して「知事選と県民投票の結果に、国があらがう術はないことを明確にすべきだ。(県民投票の)途中で(埋め立て区域への)土砂の投入や、司法の手続きに入るとすれば、表決の手段を妨げる行為にほかならないので、絶対に認められない」とした上で、実施時期について「年内は事務作業的にいっぱいいっぱいの状況になるかもしれない。(来年)3月くらいまでの間ということもあり得ると思う」と述べている。
玉城知事としては、2月の運用停止が実現できないことを背景に、政府への批判を強めることによって県民の反辺野古感情をさらに醸成し、県民投票で圧倒的な差で代替施設建設反対という民意を作り出すという戦略だ。
県民投票を武器にする玉城知事に対抗するには、一人でも多くの沖縄県民に、普天間飛行場の危険性除去の必要性や辺野古の代替施設について正確な情報を知ってもらうことなのだろう。