新型コロナでも好調な農産品輸出
農産品の輸出が好調だ。新型コロナウイルス感染症の影響がありながら、2020年の輸出額は9217億円と過去最高だった。コロナによる一時的な落ち込みから回復した昨年7月以降の平均伸び率は14.9%で、このペースで増加すれば2021年は約1兆600億円となる。民主党政権時代には4500億円に過ぎなかったのが倍増以上となるわけだ。菅政権は農産品の輸出を戦略的に促進する方針で、日本産食品に対する輸入規制についても、各国・地域への働きかけを強化する。
菅首相は5月28日の農林水産物・食品の輸出拡大のための輸入国規制への対応等に関する関係閣僚会議で、「海外市場が求めているものを作るという発想で改革を進めていけば、2025年2兆円、2030年5兆円という目標は、十分実現可能だと考えている。農業を地域の成長産業として、地方の所得を引き上げるために、政府一体となって今後も全力を挙げる」と述べている。
輸出が拡大しているのは政府や民間の取り組みの相乗効果のおかげだ。政府は2019年に閣僚会議を立ち上げ、輸出促進法の制定や輸出本部を設置した。その結果、輸出施設の認定が加速化したり、規制協議などが進展したりしている。
5月25日に行われた菅首相とシンガポールのリー・シェンロン首相との電話会談では、リー首相が、東日本大震災後に設けていた日本産食品に対する輸入規制を完全撤廃すると表明している。
その一方で、新型コロナにより家庭食需要が増加したため、民間事業者がそれに対応した産品を輸出し、2021年下半期から増加した。
たとえば、米国などで消費者向けカット商品に対応した量販・Eコマース向けの和牛販売が好調だったり、香港では安全で安心できる日本産卵の人気が高く、スーパーでも販売が好調だったりするという。
好調な農産品の輸出だが、さらなる拡大を図るためには、今後の取り組みが重要となる。たとえば政府は、専門人材を活用し、計画的にマーケットインの輸出に取り組む産地・事業者を育成するという。
地方農政局などに民間の専門人材を「輸出産地サポーター」として採用するなどして、輸出産地・事業者の輸出事業計画の実施を伴走型で支援する。マーケットインの産地づくりを官民共同で推進する訳だが、ターゲット国・地域の規制や消費者ニーズに関する知識を備えた専門人材の確保がカギとなる。
また、生産から海外での販売に至る事業者を包括する「品目団体」を組織化し、規格統一やナショナルブランド化を推進したり、農林水産物・食品の貿易に伴うリスクに対応するためのセーフティネットの措置、効率的な輸出物流の構築により輸送コストの低減を図ったりするなど、さまざまな支援策を展開していく。
農産品の輸出拡大は、〝儲かる農業〟を作ることでもある。担い手の高齢化や、後継者不足に直面している国内農業を強化するために、一層の努力が求められている。
(terracePRESS編集部)