来年には本格的な憲法改正論議が必要
憲法改正のための国民投票法改正案が、立憲民主党や共産党などの反対で今国会での採決が見送られた。来年の通常国会で採決される見通しも出ているが、立憲側は「採決を約束したわけではない」との姿勢もみせている。国民投票法の改正はもちろん、憲法自体の改正案ではなく、憲法改正に向けた議論の入り口だ。まずは改正についての議論をすることが政治の務めだが、それすらも認めないのは政治の役割の放棄に等しい。
立憲民主党の枝野代表はかつて「安倍首相のもとでは憲法改正などできない」として改憲論議を進めること自体拒否してきた。憲法改正議論は国会が進めることであり、行政府の長は介在しないため、なぜ安倍首相のもとでは議論すら進められないことになったのか理解に苦しむが、安倍首相の姿勢が「立憲主義に反する」との判断からなのだろう。
しかし、この議論もおかしな話になるのだが、現在は菅政権になっており「安倍首相のもとでは」という主張は通じないこととなった。では、改憲議論の入り口となる国民投票法改正案に応じたかと言うと、前述のとおり今国会での採決に反対し、結論は来年の通常国会まで持ち越されることとなった。
自民党は現在、改憲案を策定する「憲法改正原案起草委員会」で、同党が掲げている4項目の改憲「イメージ案」について具体的な条文案を作成する見込みだ。自民党は現在、 ①自衛隊の明記 ②緊急事態対応 ③参院「合区」の解消 ④教育無償化-の4項目を掲げており、中でも自衛隊の明記については、自衛隊をきちんと憲法に位置づけることで、「自衛隊違憲論」の解消を目指すものとされている。そのため現行の9条1項、2項とその解釈を維持しながら、自衛隊を明記する方向になる見込みだ。
もちろん、こうした自民党案が、国会が発議する憲法改正案になるとは限らない。憲法改正議論に前向きな国民民主党は、同性婚の容認や「デジタル基本権」の創設、首相の衆院解散権制約のほか、9条をめぐっては、自衛権行使の範囲を明確化する方向で議論をしており、改正に向けた条文作りも進めている。
12月2日に民間団体「美しい日本の憲法をつくる国民の会」が開いた集会には、自民、公明、日本維新の会、国民民主の与野党4党の国会議員が参加している。改正に向けた議論を積極的に議論する姿勢を示しているのがこの4党で、立憲民主党、共産党は後ろ向きでしかない。
いずれにしても、国民投票法の採決を速やかに行い、具体的な改正議論を進める必要がある。さらに、憲法議論を進める中で、同時に国会内外で日本の安全保障の議論も行われるべきだろう。2020年版防衛白書では「わが国周辺には、質・量に優れた軍事力を有する国家が集中し、軍事力のさらなる強化や軍事活動の活発化の傾向が顕著となっている」と懸念を示しているが、日本人の生命や財産、経済社会、領土、領海、領空をどのように守るのか、その議論の延長線上に9条改正案ができるはずだ。
(terracePRESS編集部)