手綱緩めず5年間で15兆円の国土強靭化対策
菅政権は、防災や減災を強化する国土強靭化の3年間の集中期間が本年度で終了することを受け、新たに来年度からの5年間で事業規模15兆円の新たな計画の取りまとめに着手した。現在、新型コロナウイルス感染症の再拡大により、感染対策ばかりが注目されているが、国民の命を守るという点では国土強靭化も同じ。菅政権は、集中期間が終了しても、防災、減災対策の手綱は緩めない構えだ。
近年、集中豪雨や地震などの災害が多発するだけでなく、激甚化している。最近でも2018年7月の豪雨、2019年も豪雨や台風被害が続発している。気象庁などによると、1日の降水量が200ミリ以上の大雨を観測した日数は、1901年以降の統計期間の最初の30年と直近の30年とを比較すると、約1.6倍に増加しているという。
特にいったん大地震が発生すると大きな被害が出ることが避けられず、1995年の阪神淡路大震災では6,482人、2011年の東日本大震災では22,551人の死者・行方不明者が出ている。それ以外の年でも100~400人程度の死亡者が出ている。また、災害では生命だけでなく、家屋などの財産も失われてしまう。
こうした災害への脆弱性を是正するのが国土強靭化計画で、安倍前政権は2018年12月14日に「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」を閣議決定し、菅政権もそれを引き継いで実施している。
3か年緊急対策は、①人命を守るための重要インフラなどの機能維持 ②電力、上水道など国民経済・生活を支える重要インフラなどの機能維持―の2つの観点から緊急対策160項目を集中的に実施している。国民の生命を守るため、大規模な浸水、土砂災害、地震・津波などによる被害の防止・最小化には2.8兆円程度を投資し、堤防のかさ上げなどを行っている。
中には、大規模停電が発生した2018年の北海道胆振東部地震の教訓をもとに、全国の主要な携帯電話基地局を対象に、予備電源の緊急点検を実施し、応急復旧の体制整備も行っている。
この3か年の緊急対策の事業費は約7兆円だが、今回取りまとめているのは5か年とされ、事業規模は約15兆円とされており、事業規模からみれば3か年の緊急対策よりもさらに対策を加速させる方針だ。
メディアは新型コロナの感染が拡大すると新型コロナばかり、災害が発生すると災害ばかりを話題にするが、政治は平素から国民の生命・財産を守るためにさまざまな政策や事業を行う責務がある。
もちろん菅政権もその使命を負っており、少しでも災害被害を減少させるため、新たな国土強靭化対策をスタートさせる。それが「国民のために働く内閣」ということなのだろう。
(terracePRESS編集部)