菅首相が示した「成長の源泉」とは
菅首相は4日、記者会見を行った。約2カ月半ぶりに国内で開いた記者会見となったが、新型コロナウイルス感染症対策、ポストコロナ社会に向けた成長戦略などについて語ったが、中でも注目されるのは、今後の日本の成長の方向性だ。少子高齢化の進展、各国経済の成長、生産性の停滞などで閉塞感に覆われる日本の未来について、あるべき成長の姿を示したことだろう。
菅首相は会見で、新型コロナについて「国民の命と暮らしを守る、それが政府としての最大の責務」と述べ、時短営業する飲食店への支援や各地の保健所に派遣する専門医1200人の確保、ワクチン接種に向けての事前準備、一人親世帯への支援など多様な取り組みを進めていることを強調した。
その上で「わが国に必要なものはポストコロナにおける成長の源泉。その軸となるのがグリーン、デジタルだ」と語っている。
中でも所信表明演説で明らかにした「2050年カーボンニュートラル」について「わが国は世界の流れに追い付き、一歩先んじるためにどうしても実現をしなければならない目標。環境対応がもはや経済成長の制約ではない。むしろわが国の企業が将来に向けた投資を促し、生産性を向上させるとともに、経済社会全体の変革を後押しし、大きな成長を生み出すものだ」と強調し、脱炭素社会を目指すことが日本の成長の源泉になるとの考えを改めて示した。
さらに菅首相が力強く語ったのがこれからの成長のカギとなる技術開発やそれへの取り組みだ。
脱炭素社会を構築するため、無尽蔵にある水素を新たな電源として位置づけ、その上で、大規模で、低コストな水素製造装置を実現し、水素飛行機や水素の運搬船も開発するという。また、電気自動車や再生可能エネルギーの普及に必要な低コストの蓄電池を開発する。排出した二酸化炭素についても、カーボンリサイクルの技術を使って、プラスチックや燃料として再利用するという。
菅首相は、こうした技術開発を行うために「政府が率先して支援することで民間投資を後押しし、240兆円の現預金の活用を促し、ひいては300兆円ともいわれる世界中の環境関連の投資資金をわが国に呼び込み、雇用と成長を生み出す」と強調した。
脱炭素社会を目指すことは、現在の経済社会を大きく変容させることにほかならない。しかし、環境問題に対応しながら経済成長を果たし、雇用を守っていくためには、これらの取り組みが必須となる。
これまで脱炭素社会の必要性は各方面で指摘されていたが、ここまで真正面から受け止め、それを成長の源泉にするという政権、社会をかつてないほど大きく変えることに取り組む政権は初めてだろう。
未来の世代にどのような20年後、30年後の社会を残すのか。菅政権はその課題に果敢に取り組もうとしている。
(terracePRESS編集部)