デジタル庁契機にCCOの設置を
2021年度政府予算案で、デジタル庁の創設の予算が計上された。21年9月に、官民の高度専門人材を500人規模で集め、総合調整機能を強力に発揮させるというのが狙いだ。政府予算案ではシステム予算の一括計上を進め、約3000億円の予算を措置している。デジタル庁は、新型コロナで露呈した日本の行政のデジタル化の遅れを取り戻す使命を負うことになる。
デジタル庁は当面、政府情報システムの整備・管理についての基本的な方針(整備方針)を策定し、それに基づいて事業を統括・監理することになる。
政府内の政府情報システムについてはデジタル庁が一括して整備、運用し、各府省のシステム、予算についてはデジタル庁から各府省に移し替えるなどするという。
これは政府内のシステムの話だが、国民にとって関心があるのは、官民の手続きで利用されるシステムの構築やデータの整備だろう。これがないと社会のデジタル化は進まない。
政府予算案では「国・地方共通のデジタル基盤の構築に向けたベースレジストリの整備」などの費用として44.2億円が盛り込まれている。
官民がデジタル手続などで共通的に使用する基本的なデータベース「ベースレジストリ」を整備し、行政機関や民間企業が、住所や土地情報などの様々な情報を行政手続きの申請時などに円滑に利用できるようにする。
これによって、国や地方自治体、国民、企業が、共通的にデジタル基盤を活用できるようにし、社会全体のデジタル化を促進するという。
「デジタル化」とは、こうしたデジタル化されたデータ、共通基盤を整備することだ。事実、新型コロナ対策の特別定額給付金の支給では、デジタル化の遅れによって支給手続きが大幅に遅れたことは記憶に新しい。こうした行政の欠陥を是正するためには、新しいデジタル基盤が不可欠なことはいうまでもない。
しかし、デジタル化の遅れはそれだけではない。何も大上段に構えたデジタル化ではなくとも、Webでの情報発信一つ見ても、政府は立ち遅れている。
それは新型コロナの情報発信をみても明らかだ。
厚労省の新型コロナページ、内閣府のホームページなどのほか、各省のホームページに新型コロナ情報が掲載されており、国民がワンストップで情報に接することはできない。まさに行政の縦割りを象徴しているのだ。
日本で浸透しているとは言い難いのだが、欧米の企業は現在、コミュニケーションの統括責任者であるCCO(Chief Communication Officer)またはCIO(Chief Information Officer)を置くところが増えている。
残念ながら日本政府にはこうしたCCOやCIOと呼べる職がなく、各府省も含めた政府全体のコミュニケーション戦略を統括することができない。このため、新型コロナでも各府省が独自に情報発信することになっている。デジタル庁を契機に、こうした政府情報の発信方法についても検討されるべきだ。
(terracePRESS編集部)