安倍政権だからできたTPP発効
環太平洋経済連携協定が(TPP)が12月30日に発効する見込みとなった。協定は参加11カ国のうち6カ国が国内手続きを終えてから60日後に発効することが規定されている。日本を含めメキシコ、シンガポールなどの6カ国が10月31日に手続きを完了している。
TPPは当初、米国主導で進められ、日本は協議の途中から交渉に参加する形となった。日本の参加が遅れたのは国内問題で、農業分野の関税の扱いなどについて国内世論の醸成などが必要だったためで、実際、交渉入りの前から投資企業と国家の紛争を解決するためのISDS条項などをめぐり多くの誤解もあり、それらが日本の参加を遅らせる事態となった。
しかし、遅れて交渉に入った日本は精力的に米国などと交渉し、その結果、2016年2月に、米国を含む12カ国が署名した。
日本にとって想定外だったのは米国のトランプ大統領の就任。トランプ氏は選挙戦中からTPPからの離脱を主張し、実際、大統領就任直後の17年1月に米国は離脱した。
この結果、一時はTPPの空中分解も懸念されたが、それを米国以外の各国と協議し、発効まで道筋をつけたのが安倍政権だ。
確かに、米国が離脱した後のTPPは参加11カ国のGDPは世界全体の13%で、米国の不参加による規模の縮小は否めない。
しかし、自由貿易を守ることが日本の生きる道であり、そのため日本は、TPPを完成させ、それに続き、インドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、ベトナム、ミヤンマー、ラオス、カンボジア、日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドの16カ国が参加する「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)」を構築するとの方針を持っている。
確かに、TPPは米国が離脱したが、RCEPの議論は別途進んでおり、これが完成すれば環太平洋、東アジアに巨大な貿易圏が完成することになることは間違いない。
前述したようにTPP11を発効まで道筋をつけたのは安倍政権であり、安倍政権の外交力はもはや疑う余地がないほど国際的にも評価されている。
米国とは今後、年明けから日米物品貿易協定(TAG)の交渉がスタートするが、日米両国はすでに、TPPなど過去の経済連携協定での関税撤廃を上限とする文書も交わしている。もしTPPがなければ米国に大幅な譲歩を迫られる可能性もあったが、TPPがあることによって、TPPで認めた水準以上の関税引き下げに応じないとの主張をしやすい環境となっている。
メディアは、国内農業に大打撃などと伝えるだろうが、安倍政権は農業対策も行っており、他産業とのバランスをとりながら影響を最小限にとどめることは間違いない見通しとなっている。