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飲食店の時短営業で〝事実〟を伝えないメディア

11都府県への緊急事態宣言で、飲食店が苦境に陥っていると言われている。メディアはそうした一部の飲食店を取り上げ、政府や自治体の支援策を一方的に批判するが、そうした報道が事実を歪めていることは間違いない。協力金によって時短営業に粛々と協力する多くの飲食店もある。

 

今回の緊急事態宣言で国や自治体が要請したのは、午後8時までに短縮する時短営業だ。

東京都の場合、緊急事態宣言が発令された1月8日から2月7日までの31日間に全面的に協力した場合に1店舗当たり186万円、営業時間短縮のため準備などが必要で、短縮が1月12日から2月7日までの27日間の場合は1店舗につき162万円、1月22日から2月7日までの17日間だった場合は1店舗102万円の協力金が支給される。

対象となるのは、営業時間短縮の要請を受けた都内全域の中小企業、個人事業主が運営する飲食店などで、大企業も対象となるが中小企業、個人事業主とは要件が異なるという。

 

メディア報道をみると、こうした協力金があっても飲食店が苦境に陥っていると伝えている。例えば、ある民放テレビは先ごろ、比較的規模の大きい東京・港区の寿司店を取り上げ、その社長の「(1日)6万円というのは、正直厳しい」とのコメントを伝えている。

同店の場合は、家賃の150万円、従業員9人分の人件費の160万円に加え、水道・光熱費などの固定費だけで400万円に達するという。これをみれば、1店舗186万円では不足するとうなずけるだろう。

 

しかし、東京都が要請したのは休業ではなく時短営業だ。同店が夜の何時まで営業していたかは不明だが、日中から午後8時までの営業はできるのだ。それで1カ月分の固定費が400万円だから苦しいと伝えるのは、正確ではない。

もちろん、住民に対しては日中でも不要不急の外出を自粛するよう呼び掛けているから、日中の営業時間に客足が鈍っていることもあるだろうが、しかし、協力要請したのは営業時間の短縮であり、そこをきちっと整理すべきだろう。

 

日本政策金融公庫のレポートによると、一般的な20坪の寿司店のモデルでは、売上高が306万円なら、人件費や家賃などの固定費を除いた利益が約30万円となるという。もし、この寿司店が通常午後11時まで営業していて、時短要請に協力した場合3時間の営業時間の短縮になるが、その時短に伴い売上高が減少しもし半分になったとしても、186万円で賄えることになり直ちに苦境に直面しているとは言えないはずだ。個人で飲食店を営んでいる場合など、多くはこちらに該当するだろう。

 

このテレビ報道は「実態にあっていない支援策に、飲食店の苦悩は深まっています」と結んでいるが、さもほとんどの飲食店が困窮しているかのような印象だ。実際、大型店など困っている飲食店を取り上げるのはいい。しかし、その一方で協力金の〝効果〟も伝えるべきだ。そうした報道姿勢がなければ、国民は混乱するばかりだ。

 

(terracePRESS編集部)

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