ポストコロナの経済再生に向け地域金融の基盤強化
地域経済の活性化に不可欠なものの1つに、地域の金融機関がある。新型コロナウイルス感染症でも、地銀は各地の企業の資金繰り支援などを行い、地域経済の維持で重要な役割を果たしてきた。しかし、人口減少や超低金利の時代に地方銀行の収益環境は悪化を続けている。こうした状況を打開する合併や再編を支援するための改正金融機能強化法が先ごろ成立した。地銀再編が加速しそうだ。
菅首相は1月18日の通常国会の施政方針演説で「地域の経済の核となる地域金融機関の経営基盤を強化することとし、統合などの支援を日本銀行とも連携しつつ進める」と強調している。
その実効策の1つが改正金融機能強化法だ。今回の改正は、新型コロナウイルス感染症などの影響による社会経済情勢の変化に対応するためのものだ。新型コロナで地域経済を支える地域の中小企業などが大きな影響を受けている。
ポストコロナでは、それらの企業が地域経済を牽引することが不可欠だが、企業を支援するためには、金融機関が自らの経営基盤を強化する必要がある。
そのため、今回の改正では2026年3月まで申請可能な時限措置として、ポストコロナの地域経済の回復・再生を支える金融機能を維持するための資金交付制度を創設した。
資金交付の対象を「人口減少地域を主たる営業地域とする銀行等であって、合併・経営統合などの事業の抜本的な見直しを行うもの」とし、システム統合や店舗統廃合で発生する初期費用の3分の1程度、約30億円を交付するものとなっている。
また今回は、銀行の業務範囲や出資規制を緩和する改正銀行法も成立。銀行の業務に、銀行業の経営資源を主として活用して営むデジタル化や地方創生などに資する業務を追加。地方創生などに資する業務を営む会社を子会社・兄弟会社に追加した。
観光業など、新型コロナの影響で売り上げが消滅した事業者は少なくない。そうした中で、中小企業は経営者が高齢化する一方、新型コロナだけでなく、地域の人口減少や少子化、DX(デジタルトランスフォーメーション)やグリーン化などさまざまな厳しい課題に直面している。
極論すれば、地域の中小企業は、こうした課題に立ち向かうか、廃業するかの選択を迫られているのだ。
コロナ後の産業構造の変化に立ち向かうことは企業の大きなリスクであり、そのリスクは金融が分担するべきなのだが、分担するには金融機関の経営基盤が強化されていなければならないだろう。
菅首相は「統合などの支援を日本銀行とも連携しつつ進める」と述べているが、その日銀はすでに、経営統合など収益力強化に取り組む金融機関に補助金を出す制度を開始している。今回の改正で、早急に地銀の再編、経営基盤の強化を進め、地域の企業を支援する必要がある。
(terracePRESS編集部)