地域資源をフル活用の「農山漁村発イノベーション」
国内農業は担い手の高齢化、減少という危機に直面している。農業をリタイヤする人が増えれば、農地はやがて虫食い状態となり荒廃が進むことになる。国内での食糧確保すら危うくなることも決して絵空事ではない。そのため、農水省はこのほど、農業経営を行う人の確保と農地の適切な利用促進、農村の所得の確保などを図るため「人・農地など関連施策の見直し」を取りまとめた。
農業の成長産業化や所得の増大、つまり〝儲かる農業〟を進めるためには、人の確保とともに、生産基盤である農地が最大限利用されるように、さまざまな施策を実施することが不可欠となっている。
このため、農林水産省では昨年12月、「農林水産業・地域の活力創造プラン」を改訂したが、それに基づいた人の確保策や農地の適切な利用の促進策をまとめたものが「人・農地など関連施策の見直し」となる。
具体的には、「人・農地プラン」や「農地バンク等」「人の確保・育成」「持続的な農地利用を支える取組の推進」「農村における所得と雇用機会の確保」「安心・安全な生活環境の確保」「農地の長期的な利用」などの課題について、今後の政策の方向性を示している。
例えば、「人・農地プラン」は、農業者が話合いに基づき、地域農業における中心経営体、地域における農業の将来の在り方などを明確化し、市町村により公表するものだ。
これについては「農地の集約化に重点を置いて、地域が目指すべき将来の具体的な農
地利用の姿(「目標地図」)を明確化する」、「ルールとして継続的に取り組むべきものとし、法定化を含めて位置付け、地域住民への理解の浸透を図る」などとしている。
「農地バンク等」に関しては、この「目標地図」を実現するため、都道府県、農業委員会、市町村などの関係機関が「ワンチームとなって、関係機関の側からの働きかけ等を行い、体系的に貸借等を進める」といった能動的アプローチへと転換するという。
「人の確保・育成」については、都道府県が中心となって「新規就農の確保・育成について方針の策定等を行い、農地の取得、機械・施設の導入や販路の確保などのきめ細かな支援を実施する」ほか、若者らに農業の魅力の発信を行ったり、幅広い層の意見を聞く場を設けたりする。
「農村における所得と雇用機会の確保」については、農山漁村の担い手として、農業以外の事業にも取り組む農業者(半農半X)など、多様な形で参入を促進するため、農泊、農福連携、ジビエなど農山漁村の地域資源をフル活用して事業展開することで所得確保手段の多角化が図られるよう、6次産業化を「農山漁村発イノベーション」に発展させるという。
農山漁村の活性化はもはや〝古くて新しい課題〟になっている。菅政権は農業、農山漁村の活性化を重要な政策課題として位置付けている。今後は政策をフル動員して農山漁村の活性化に取り組むことが期待されている。
(terracePRESS編集部)