海上保安庁の装備増強などが不可欠
政府の総合海洋政策本部参与会議は先ごろ、尖閣諸島などへの中国の海洋進出に対し、海上保安庁の装備増強による現場対応力の強化などを柱とする意見書を菅首相に提出した。南シナ海についても、シーレーンの意義の一層の周知と明確化を図り、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を推進することなどを求めている。
意見書はサブタイトルを「『東シナ海等における情勢変化への対応』と『カーボンニュートラル実現に向けた海洋の貢献』」としている。
日本の海洋を取り巻く状況については、東シナ海の尖閣諸島周辺海域での中国海警局の船舶による領海侵入、南シナ海での中国の大規模かつ急速な拠点構築など、現状を変更し緊張を高める行動があるとし、「こうした状況は、我が国の領海・排他的経済水域における安全や海洋権益への脅威となるのみならず、我が国のエネルギー・物資の主要な輸入経路となるシーレーンの安定的利用にとっても大きな脅威となる可能性が高まっている」との懸念を示している。
その上で、海洋を取り巻く情勢の変化を踏まえ、「東シナ海等における情勢変化への対応」を緊急に取り組むべき施策として掲げている。
具体的には「海上法執行能力の強化」、「関係国との連携の強化」、「海洋状況把握(MDA)の能力強化」などが柱となっている。
そのうち「海上法執行能力の強化」では「『海上保安体制強化に関する方針』に基づき、領海警備等のため海上法執行能力の強化を図っていく必要がある」とし、「中国側の体制整備と運用を見極めた上で、十分な海上法執行能力が維持できるよう着実な巡視船・航空機等の増強を図るとともに、当該方針を状況に応じて見直すことを検討するなど体制強化を進める」などと海上保安庁の装備増強などを求めている。
「関係国との連携の強化」では、「本年2月、中国海警法が施行されたことも踏まえ、東シナ海や南シナ海において更に緊張が高まるおそれがある」との危機感を表明している。
その上で「海洋における『法の支配』のために国際世論を主導するのが我が国の役割であり、国際法との整合性の観点から問題がある規定を含む中国海警法に対する深刻な懸念を関係国と共有し、連携を強化することにより中国に対して国際法を遵守するよう強く促していくことが重要である」と指摘している。
菅政権では、G7サミットや個別の首脳会談などで首相自らが、「自由で開かれたインド太平洋」の重要性を各国首脳に説明しているほか、同様に茂木外相も各国との外相会談などで提示しており、意見書が求める「関係国との連携の強化」はほぼ実行されているのが実情だ。
また、日本にとっては南シナ海のシーレーンの確保も重要で、これについては「交通の難所であるマラッカ・シンガポール海峡の航行安全確保の支援や海上保安能力向上支援及びシーレーン沿岸国との産業協力の強化などを通じ、我が国の資源の安定的な確保、グローバルサプライチェーンの維持といった、経済安全保障の確保の観点からも、シーレーンの安定的な利用の確保に向けた取組を推進する」と要請している。
(terracePRESS編集部)