デジタル化の遅れに懸念示す経済財政白書
政府が先ごろ公表した令和3年度の「年次経済財政報告(経済財政白書)」は、デジタル化の遅れなど日本企業の成長に向けた3つの課題を掲げている。政府は9月にデジタル庁を発足させ、デジタル化を進めているが、民間企業の取り組みも合わせて、一刻も早く他の先進的な国々と肩を並べることが不可欠。少子高齢化が進む中で、デジタル化によって新しい社会の構築が期待されている。
経済財政白書は、日本企業にとって成長の課題は、①デジタル化の装加速、それを担うソフトウェア業界での開発インセンティブ強化、情報通信業の投資・人財不足の解消②カーボンニュートラルに向けた世界的な動きの中、イノベーションによるエネルギー効率の引上げと電力コストの引下げを実現③地域の立地企業が直面する人口減少によるインフラ維持等のコスト上昇を抑制などと指摘している。
経済財政白書によると、国際社会の中での日本のデジタル競争力は、調査国63カ国中27位。テレワークについても、日本のテレワーク利用率は31%。これに対して、中国のテレワーク利用率は75%、米国、イタリアが61%、英国が55%、スウェーデンが52%などとなっている。
また、内閣府の調査によると、2020 年5月時点では「テレワーク中心」と回答した割合は3分の1以上を占めていたが、1年後の2021 年5月時点では、全体の実施率が上昇する中で、その割合は若干低下している。特に、「ほぼ 100%テレワーク」とする割合は 23.9%から 14.3%へと大きく減少し、テレワークと出勤を組み合わせる形への移行がみられているという。
また、日本企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組み状況は、従業員規模 500 人以上の大企業に対して行われたアンケート調査では、部分的にでも既に取り組んでいる企業も含めると7割弱にまで達している一方、中小企業は1割弱にとどまり、DXの内容を「よく知らない」「聞いたことがない」とする回答が半数を占めているという。
また、日本と世界のデジタル・非接触型サービスの利用状況をみると、「エンターテインメント」「出前・宅配」「飲食」「コミュニケーション」「ウェルネス」の各分野の10項目のうち日本の利用状況は「エンターテインメント」の「オンラインストリーミング」で10-19%だった以外は、すべて1-9%にとどまっている。米国、英国、フランス、インド、韓国、中国と比べると断トツに遅れており、例えば米国では10項目のうち8項目が10-29%、韓国では8項目が10-40%超などとなっている。
経済財政白書では遅れるデジタル化への対応として、ソフトウェア開発の価格設定を成長促進的なものに変換することを提唱。また、情報通信分野に対する人財や投資の配分額も少ないことは否めず、それがデジタル化の足かせになっているため、官民ともに、こうした波及効果の大きい分野への資源配分の拡大も求めている。
日本の本格的なデジタル化対策はスタートしたばかり。これを普及させ、展開させることは次期政権の大きな課題となる。
(terracePRESS編集部)