「クリーンエネルギー戦略」の策定進める岸田政権
岸田政権は、脱炭素社会の構築を目指し、エネルギー需要側の事業者や個人らが経済社会全体での取り組みを加速させる「クリーンエネルギー戦略」の策定をスタートさせた。有識者懇談会の初会合を先ごろ開催、社会全体の取り組みのための促進策などの検討を始めた。
日本は2050年までのカーボンニュートラル実現を目標として掲げているが、これまで「グリーン成長戦略」「エネルギー基本計画」「地球温暖化対策計画」といった重要戦略をまとめている。
「グリーン成長戦略」は研究開発のあり方などをまとめ、「エネルギー基本計画」ではエネルギーミックスの数字を含む当面の政策の方向性、「地球温暖化対策計画」は温室効果ガス全体を網羅した削減計画などとなっている。
しかし、カーボンニュートラルを実現するためには、産業革命以来の化石エネルギー主体の経済・社会構造から、脱炭素型の構造に社会システム全体を変革する必要がある。それは「革命」といっていいほどの変革だ。それを実現するには、事業者それぞれ、国民一人一人が仕事のやり方や、事業スタイル・生活スタイルを炭素中立型に変えることが不可欠だ。
この経済社会や産業全体が直面する〝数世代に1回の変革〟をどう成し遂げることができるか、「クリーンエネルギー戦略」は、経済社会変革の全体像や、その道筋を示すものとなる。
具体的には、①生活スタイルなどを炭素中立型に転換していく道筋②需要サイドの各分野でのエネルギー転換の道筋③足下の投資につながるよう、新たな成長分野におけるビジネス・産業の創出への道筋④追加的コストを最大限抑制し、経済主体の行動変容を促しつつ、社会全体で受け止めるための方策-などと考えられている。
2030年度46%削減、2050年カーボンニュートラルの実現は、海外から電力を輸入する国際的な電力グリッドを持たないうえ、福島原発事故などによる原発不信があり、再生可能エネルギーも国土構造から高コストにならざるを得ない日本にとっては、たやすい道のりではない。
しかし、この目標を実現するために新しい技術を創出したり、投資を呼び込んだりすることで、これまでの〝弱み〟を〝強み〟に転換させることが可能となる。
岸田首相は「クリーンエネルギー戦略」に関する有識者懇談会の初会合で「変革を成し遂げるためには、単に、エネルギー供給構造の変革だけでなく、産業構造、国民の暮らし、そして地域の在り方全般にわたる取り組みが必要」と強調している。
2050年のカーボンニュートラルは菅前首相が提唱し、岸田首相が引き継いだ重要な国家戦略。新型コロナウイルス感染症対策ももちろん大事だが、次世代、次々世代に豊かな日本を継承することが重要な政治の責任だ。
(terracePRESS編集部)