不可欠な感染対策と経済の両立
内閣府が先ごろ公表した2021年10~12月期の国内総生産(GDP)の速報値は、実質(季節調整値)で、7~9月期比で1.3%増、年率換算で5.4%増となった。新型コロナウイルス感染症が落ち着いていた時期に個人消費などが回復したことが寄与した。経済活動の制約がなければ堅調な経済になるため、感染対策と経済活動の両立が必要なことを示した形だ。
GDP成長率のうち、どの需要がGDPをどれだけ増加させたかを示す寄与度でみると、実質ベースでは国内需要(内需)が1.1%、財貨・サービスの純輸出(輸出-輸入)が0.2%となり、内需が主導する形となった。
内需の需要項目別の動向をみると、民間需要が1.9%増、公的需要が0.9%減だった。
民需のうち民間最終消費支出は2.7%増で、7~9月期の0.9%減から大幅に回復した。そのうち、家計最終消費支出は2.8%増となった。また民間住宅投資は0.9%減、設備投資は0.4%増だった。
一方、公的需要は0.9%減で、そのうち公的固定資本形成(公共投資)が3.3%減と大幅に落ち込んだ。
プラス成長となったのは2四半期ぶりだが、2022年は年明けからオミクロン株の急激な感染拡大があり、22年1~3月期は再び減速する可能性もある。
また、同時に公表された2021年通年の実質GDPは前年比1.7%増となり、3年ぶりのプラス成長となった。
松野官房長官は記者会見で、10~12月期の実質GDPについて「実質GDPの水準はおおむね新型コロナウイルス前の水準まで回復した。緊急事態宣言の解除を受けた経済社会活動の段階的な回復などで個人消費や設備投資が増加した」と分析。
そのうえで「景気は持ち直しの動きが見られるものの、(新型コロナの)オミクロン株の感染拡大で消費者マインドは低下している。景気の下振れリスクに十分注意する必要がある」と強調している。
山際経済再生相も「下振れリスクに対応しつつ、傷ついた経済を一日も早く立て直す」と述べている。
事実、オミクロン株のピークアウトはまだ見えておらず、消費者マインドが著しく低下する可能性を否定できない。しかし、感染対策と経済を両立させることができれば、個人消費が回復することも事実だろう。
岸田政権は現在、感染対策と経済の両立を目指し取り組んでいる。新型コロナの感染拡大を防止することは重要だが、経済を止めては日本経済の再生がさらに難しくなる。日本経済の低迷は、取りも直さず家計の低迷を意味する。国民の生活を守るには、感染対策と経済の両立が不可欠だ。
(terracePRESS編集部)