日本も「新時代」の認識が必要
ロシアのウクライナ侵攻によって平和だった欧州では「新時代」に入ったとの認識が出ている。一方、アジアでは中国が経済成長を背景に軍事力を増大させており、すでに〝新時代〟に入っていると言っても過言ではない。そうした時代に入っているという認識を国民が共有することが重要だ。
ロシアの侵攻は欧州各国に衝撃をもたらした。ドイツのショルツ首相が「ロシアの侵攻は転換点となった。戦後秩序全体への脅威だ」との認識を示し、これまでの紛争地への武器供与を行わないという原則を変更し、ウクライナへ対戦車ロケットや地対空ミサイルを提供し、国防費を増大する考えも明らかにした。
フランスのマクロン大統領も「欧州で戦争は、もう歴史書だけの話ではない」と強調し、自国や欧州の防衛力を増強する必要性を指摘した。
今回のロシアの行動は、多くの欧州各国やNATOの虚を突いたものだろう。だからこそ、欧州各国にとっては「新時代」入りしたとの認識が広まったわけだ。
さて、アジアに目を転じるとどうだろう。中国がアジアの安全保障を担っていた米国を上回る経済成長を実現し、その経済力を背景に軍事力を急速に増大させ、南シナ海や東シナ海で海洋秩序を乱すという行動をしている。台湾海峡の緊張も高まっている。
「自由で開かれたインド太平洋」の実現を目指し、日米豪印がクアッドを設立したのもこのためだし、米英豪がオークスを創設したのも対中戦略のためだ。
フランスやドイツにしても、中国の〝覇権主義〟への警戒感を強め、インド太平洋に艦隊を派遣するなどの具体的な行動もしている。それだけ、アジアの平和にとって中国の軍事的拡張が脅威になっているわけだ。
国連海洋法条約に基づくオランダ・ハーグの仲裁裁判所が、南シナ海での中国の海洋進出を巡り、中国の主張を国際法上の根拠がないと認定したのは2016年。中国は、その国際的な司法判断を無視し、現在も実効支配を続けている。
世界の大国である中国が覇権主義を強めている事実をみれば、アジアではすでに〝新時代〟に入っていると言っても過言ではない。
もし欧州がロシアへの警戒を強め、具体的な行動をしていれば、ロシアの愚行を未然に防げたかもしれないが、残念ながら現実は違った。
しかし、アジアでは警戒を強めるべき明確なシグナルがあるのだ。それが中国の軍事的な増強であり、南沙諸島、台湾海峡、尖閣諸島などでの行動だ。アジアはすでに、その中国を警戒すべき時代に入っているのだ。
欧州では、ロシアの狙いが「ウクライナだけにとどまらない」(ストルテンベルグNATO事務総長)との警戒感も出ている。アジアでは中国が今後、どのような行動に出るかは分からないが、日米安保があれば平和を維持できると考えるのはすでに通用しない時代に入っているのだ。
日本はすでにそうした新時代に突入していることをまず国民が認識し、その上で防衛力の増強や国際的な協調態勢を構築することが不可欠となっている。
(terracePRESS編集部)