自公連立の強み生かした10万円給付
政府は「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」を組み換え、国民一人当たり10万円を給付することを決めた。政府と与党の自民、公明両党の協議で決まったものだが、公明の意見も取り入れ、生活困窮者への支援に加え景気へのテコ入れも強化することへの機動的転換という点では、連立政権の強みを活かしたと言えるだろう。
緊急経済対策では、生活支援臨時給付金として、生活に困っている世帯に対し、一定の条件の下で一世帯当たり30万円を給付することが盛り込まれていた。
もともと、新型コロナ感染症の感染拡大防止対策では、収入が減少した人にはさまざまな措置が取られている。中小企業なら最大10分の9が助成される雇用調整助成金や、個人向け緊急小口資金や総合支援資金の特例も設けられている。緊急小口資金は原則10万円以内で1年据え置き、2年以内の償還、総合生活資金は2人以上の世帯なら月20万円以内で1年以内の据え置き、10年以内の償還でいずれも無利子だ。その上、償還時に、所得の減少が続いている住民税非課税世帯は償還を免除する制度もある。
このほか、国民健康保険、国民年金などの保険料の減免、子育て世帯への臨時特別給付金などがある。
また、事業収入が減少した中堅・中小企業に上限200万円、個人事業主に上限100万円の範囲内で支給する持続化給付金も、事業を継続してもらい、結果として雇用を守るために作った制度だ。
こうしたさまざまな制度を整備したうえで、さらに生活に困っている世帯を支援するというのが30万円を支給する生活支援臨時給付金だった。つまり、30万円はまさに生活に困っている人に対して支給するものだったわけだ。
これに対し、国民一人当たり10万円の給付は、制度設計の考え方そのものが異なる。新型コロナウイルス感染症の感染防止が行われていても収入にはあまり影響しない人々は多い。公務員や大企業の労働者、年金生活者もそうだ。そうした人々への現金の支給は生活支援とは考えられないだろう。生活支援というよりも経済の下支えということになる。こうした人々が、新たに何かを買うことによって景気を下支えすることができる。
もちろん収入が減少していても、生活支援臨時給付金の枠内に収まらなかった人たちもおり、そのような人には、生活支援の意味合いもある10万円となるだろう。
いずれにしても、30万円の生活支援臨時給付金がダメで、一律10万円がいいという問題ではなく、この二つの制度は考え方が異なるのだから、是非の問題ではなく、どちらを選択するかの問題なのだ。
政府はこれまで生活支援臨時給付金を選択していたわけだが、それが自公の政権与党、それも公明の強い要望で別の選択を機動的に取り入れたのだから、まさに連立政権の強みが発揮できたと言えるだろう。
(terracePRESS編集部)