経産省が戦略物資の緊急対策をスタート
ロシアのウクライナ侵略で、世界的に経済、産業などに不可欠な戦略物資・エネルギー供給が懸念されている。日本でもウクライナ、ロシアに依存度が高い品目を中心に、安定的な供給が不安視されている。こうした情勢を踏まえ、経済産業省が安定供給確保のための緊急対策を策定した。
経済産業省は先ごろ、新たに設置した「戦略物資・エネルギーサプライチェーン対策本部」の会合で「ウクライナ情勢を踏まえた緊急対策」をとりまとめた。
ウクライナ情勢を受け、国内の石油・石炭・天然ガスのエネルギーや半導体などの供給不足による社会経済活動への影響を最小限にするためには、影響を受ける物資を特定する必要がある。
このため「ウクライナ情勢を踏まえた緊急対策」では、対策が必要な物資を特定するにあたっての基本的考え方として、石油・石炭・天然ガスのエネルギーや半導体以外にも、貿易統計ベースで、ウクライナ、ロシアへの依存度が高い品目について分析を行った。
具体的にはロシアまたはウクライナからの輸入について、①日本の輸入に占める割合、または②世界全体の輸出に両国からのものが占める割合のいずれかが一定以上である品目を抽出した。
その結果、「石油、石炭(一般炭・原料炭)、LNG」「半導体製造プロセス用ガス」「パラジウム(触媒用途等)」「合金鉄(ステンレス・鉄鋼製造用)」が、対策を講じる必要のある物資と判断した。
その上で石油やLNGなどは産油・産ガス・産炭国への増産働きかけをするほか、石油の主要消費国との連携なども行う。
ただし石油に関しては、ロシアは世界3位の生産国だが、日本に輸入されるロシア産は全体の3.6%程度に過ぎず、直ちに甚大な影響がでるとは考えにくい。
一方、日本のLNG輸入量は世界2位で、発電用が約60%、都市ガス用などが約40%となっている。このうちロシア産は約9%を占めており、仮にロシア産の輸入が止まれば、電力・ガスの安定供給に支障が出る恐れもある。
このため、短期的な措置として、LNGの安定供給に向けた産ガス国への働きかけやLNG需給状況把握のための体制構築、燃料供給の緊急対応策の強化を進め、供給途絶リスクの低減を図るという。
また、自動車排ガス浄化用触媒や歯科用の銀歯、電子機器のメッキに用いられる貴金属のパラジウムは、世界の生産量のうちロシアが44%を占めトップ。日本の輸入もロシア産が43%でトップとなっている。当面は、企業在庫などによる対応と、ロシア以外からの代替調達によって対応するという。
ロシアのウクライナ侵略は、日本の経済社会や国民生活に不可欠な戦略物資、エネルギーの供給が不安定になり得ることを改めて想起させた。岸田政権はウクライナ問題以前から経済安全保障の構築に取り組んでいるが、まさに現在の日本が必要としている政策だ。
(terracePRESS編集部)