現時点では妥当な日韓首脳会談見送り
政府は今月下旬にスペインのマドリードで開かれる北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に合わせた岸田首相と韓国の尹(ユン)大統領の首脳会談を見送る方針を固めたという。尹大統領が5月に就任して以来、韓国側から旧朝鮮半島出身労働者、いわゆる元徴用工問題など日韓関係を打開する具体的な提案がない中で、首脳会談を開いても成果が上げられないとの判断は妥当だ。
尹大統領の就任を契機に、日韓両国はこれまで事務レベルも含めて幾多の対話を重ねてきた。
大統領就任前の4月25日には韓国次期政権の代表団(韓日政策協議代表団)が来日して林外相と会談し、林外相が「日韓関係改善のため、新政権と緊密に協力していきたい」などと伝えている。
5月10日には韓国を訪れた林外相が尹大統領と会談し、「旧朝鮮半島出身労働者問題を始めとする日韓間の懸案の解決が必要」と直接伝えている。
また6月8日には森外務事務次官が訪韓し、朴外交部長官(外相)や趙外交部第1次官と相次いで会談し、旧朝鮮半島出身労働者問題など日韓間の懸案の解決が急務となっていることを指摘している。
朴外相は就任後、日韓の懸案ついて「私たちが知恵を集めて両国の国民らが受け入れられる解決方法を模索できると思う」と述べていたが、現在までに韓国側より新たな解決案は示されていない。
この間、元徴用工の関連訴訟で賠償を命じられた三菱重工業の資産について、韓国の裁判所が新たに売却命令を出しているし、慰安婦問題にしても日本側が拠出した資金で設立された財団は日本の同意なく解散したままだ。
また、5月下旬には、韓国が不法占拠する島根県隠岐の島町の竹島周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)内で、韓国が日本の同意を得ないまま海洋調査を行うという事態も発生した。
韓国は、慰安婦問題では日韓合意を一方的に無視し、徴用工訴訟でも日韓請求権協定に反する事態を招いている。〝ゴールポストを動かす〟などと言われるが、そうした可能性があることを前提に考えれば、日本が前のめりになる必要はないだろう。
とは言っても、尹政権は文前政権とは異なり、日本政府と同じ価値観も共有している。また、中国のアジア進出が進んだり、北朝鮮の軍事的な脅威が進んだりしている中で、日米間の連携はますます重要となっている。
米国を訪問した韓国の朴外交部長官は、北朝鮮に対処するため、日本と韓国が軍事機密を共有するための協定(GSOMIA)の運用を、できるだけ早期に正常化したいとの考えを示している。
日韓関係の改善には、こうした懸案を一つ一つ解決することが重要で、ボールは韓国側にあることを一層主張する必要がある。
(terracePRESS編集部)