未来を見据えた分散型国づくりを
新型コロナウイルス感染症を契機にリモート勤務など新しい働き方が定着した。それに伴い、地方圏での生活を望む大都市圏生活者も増えている。そのため、豊かで活力ある地方を創り、現在の東京一極集中型から脱した分散型国づくりを推進することが不可欠となっている。国土交通省も2023年度から分散型国づくりを加速させる構えだ。
岸田政権は、地方からデジタルの実装を進め、地方と都市の差を縮める「デジタル田園都市国家構想」の実現を目指している。デジタルを利用し、地方が地域の個性と豊かさを保持しながら、都市部に劣らない生産性や利便性を備え、人々が豊かな暮らしを実現できるようにするものだ。
もちろんそうした新しい地方圏はデジタルだけで作れるものではなく、まちづくりなども不可欠となる。
国土交通省は2023年度予算の概算要求で、「国民の安全・安心の確保」「経済社会活動の確実な回復と経済好循環の加速・拡大」「豊かで活力ある地方創りと分散型国づくり」を3本柱に据えている。
災害対策などを進めることによって国民が安全で安心できる社会の構築や、ポストコロナ、グリーン、デジタル対応なども待ったなしで必要なことは間違いないが、日本人が将来にわたって豊かな生活を実現できるようにするには、分散型国づくりが求められる。
その分散型国づくりの1つが多様なライフスタイルを支えるコンパクトでゆとりとにぎわいのあるまちづくりの推進だ。国交省は23年度予算に879 億円を要求。「防災・減災を主流化したコンパクトシティの推進」や「ウォーカブルなまちづくり、まちの資源利活用によるエリア価値の向上に対する支援」「多様なライフスタイルを支える持続可能な多極連携型まちづくりの強化」などを進める。
特に地方都市で、地域の活力を維持しながら医療・福祉・商業などの生活機能も確保し、高齢者が安心して暮らせるよう、地域公共交通と連携したコンパクトなまちづくりを「コンパクト+ネットワーク」と呼ぶが、実はこの取り組みはすでに着実に拡大しており、2022年4月1日時点で、約630 都市が居住や都市機能の集約を目的とした立地適正化計画の作成に取り組み、うち448 都市が計画を作成・公表済という。
また、「個性ある多様な地域生活圏の形成」も必要で、同省は二拠点居住やワーケーションにも対応した新たな国土づくりに向けて270億円を要求している。
このほか、地域・拠点の連携を促す道路ネットワークの整備や港湾整備、スマートシティの促進など、国土分散にはさまざまな政策が必要となる。
「分散型国づくりや多極連携型まちづくりが必要」と言えば、誰もが賛同するだろう。しかし、それを実現していくためにはさまざまな事業が必要だし、その事業を行うには予算措置も不可欠となる。
少子高齢化の進展など日本の現状は厳しいが、だからこそ将来を見据えた事業に投資し、新しい経済社会を構築することが必要だ。
(terracePRESS編集部)