「あらゆる手段」で経済支える政府、日銀
麻生財務相と黒田日銀総裁が22日会談した。会談後、公表した共同談話では経済活動を支えるため「あらゆる手段を講じる」と表明した。国際会議後の共同会見を除けば、財務相と日銀総裁がそろって会見するのは異例で、新型コロナウイルス感染症の影響で下振れしている経済を成長軌道に回復させることについて、政府・日銀が強い決意を示したといえる。
改めて指摘するまでもないが、政府は4月に事業規模117兆円に達し、世界でも最大級の緊急経済対策を策定し、それに基づく第1次補正予算を現在、実行に移している。中小企業などの資金繰り支援は、政策金融機関、民間金融機関による実質無利子・無担保融資を含め総額45兆円規模にも達している。
また、これに加え、企業の資金繰り対策の積み増しなどの金融機能の強化や地域経済対策などを含む第2次補正予算も準備している。
一方、日銀は社債などの購入(最大20兆円)や、金融機関への資金供給制度(最大25兆円)を実施しているが、22日に開いた臨時の金融政策決定会合で、中小企業を支えるため、金融機関に対する最大約30兆円の新たな資金供給策を決めている。6月から、利子をつけずに融資する民間金融機関へ有利な条件で資金を流すことで、積極的な貸し出しを促す方針だ。日銀はこれらを含め、最大75兆円の「コロナ対策の特別プログラム」として実施している。
こうしたこれまでの取り組みを前提にし、共同談話は「当面、感染収束までに要する期間や、世界各国の動向等について様々な不確実性があるが、政府と日本銀行は、こうした施策の実施を通じて、企業金融の円滑化と金融市場の安定に努め、事態を収束させるためにあらゆる手段を講じることとしており、感染収束後に、日本経済を再び確かな成長軌道へと回復させていくために、一体となって取り組んでいく」と表明している。
日本経済は1-3月期の国民総生産(GDP)が実質で年率換算3.4%減となり、4-6月期はさらに落ち込むことが予想されている。
また22日公表された4月の消費者物価指数は生鮮食品を除いた総合指数が、世界経済の停滞を背景に原油価格が下落した影響でマイナス0.2%と、3年4カ月ぶりにマイナスに転じている。
コロナ収束後の日本経済は、世界経済の状況とも関係するため「V字回復」になるのか「U字回復」になるのか予断を許さない状況だが、政府は底割れを回避し、成長軌道への回復を確実にする考えだ。また、新型コロナの影響でデフレ懸念もあるが、政府はこれについても「絶対にデフレには戻さないという決意で臨んでいる」(西村経済財政担当相)としている。
残念ながら多くの国民にはこうした政府の取り組みは知られていないが、政府・日銀は着実に日本経済へのテコ入れを行っているのである。
(terracePRESS編集部)