劣化進むメディアが日本をダメにする
新型コロナウイルス感染症をめぐる報道で、大手メディアの劣化が止まらない。民放テレビの素人コメンテーターが適当なコメントを流し続けるかと思えば、専門家の見解を捻じ曲げて伝えたり、事実とは異なる記事や映像を流したりするなど、その〝惨状〟は目を覆うばかりだ。いずれも、その根底には「政府を批判すればいい」「大げさに伝えればいい」といったメディアとしては浅薄な〝信念〟しかない。劣化したメディアの誤った報道が、日本をダメにしていくのだ。
メディアの劣化具合は、最近でも枚挙にいとまがない。フジテレビ系の情報番組「バイキング」は5月19日の番組で、東京・原宿など人混みが多い様子を伝える際に、「17日竹下通り」などのテロップを付けて出した映像が、実は3月の映像だった。
気の緩みで人が多く出ていることを印象付けようとしたのだが、17日は気温が25度を超える暑さだったのに、映像に映っている人が厚着だったため判明した。
テレビ朝日の情報番組「グッド!モーニング」は5日の番組で、新型コロナウイルス感染症のPCR検査について取材した医師の意見を真逆に報道した。その医師は「今の段階でPCR検査をいたずらに増やそうとするのは得策ではない」というのが持論で、番組の取材でもそのような趣旨を語っていたにも関わらず、インタビューをつまみ食いして、さも「PCR検査を増やすべきだ」と発言しているように構成されたのだ。
これらはほんの一部で、そもそも民放の情報番組の場合、タレントが司会で、コメンテーターは素人というケースが多く、茶飲み話のような誤った情報や一方的な見解をたれ流しているのだ。
しかし、こうした〝誤報〟をたれ流すのは民放テレビだけではない。
新型コロナウイルスの治療薬候補の「アビガン」の臨床研究を進めている藤田医科大は20日、研究の中間解析に関する一部報道について「安全性を担保するために行われるもので、有効性の判定が主目的ではない」との見解を発表した。この一部報道というのは、共同通信などが「臨床研究で明確な有効性が示されていないことが分かった」などと報じたものだ。
藤田医科大の見解を伝えたメディアによると、同大関係者は「報道には誤解がある。中間解析で結果を出す方が異例だ」と指摘し、厚生労働省も「途中経過で判断するのは時期尚早」としているという。
つまり、研究の中間解析は安全性を確認するためのもので、有効性についてはまだ判断できない状況なのだ。同大は「誤解がある」としているが、中間解析の位置づけを無視して、安全性を論じるのは「誤解」ではない。取材者が中間解析の位置づけを知らなかったとは思えないから、これは「誤報」、それも意図的な「誤報」だ。
最終的な結論がどうなるかは不明だが、この段階で「有効性が示されなかった」と断じるのはフェイクニュースというほかはないだろう。
新型コロナウイルス感染症対策をめぐっては、メディアによる政府批判が展開されているが、その多くは「政府は批判するもの」という浅薄なジャーナリズム論に乗っかったものでしかない。
(terracePRESS編集部)