リスクコミュニケーションの意識が希薄な政府
新型コロナウイルスの感染がなかなか収束しない。7月下旬から8月中旬まで、メディアなどが「第2波」と呼ぶ感染者の増加後いったん落ち着きを取り戻したが、11月中旬から、傾向的には再び増加に転じている。その間、感染拡大の要因として「Go Toトラベル」ばかり注目されており、Go Toの停止に消極的な姿勢を示した菅内閣の支持率は低下の一途をたどっている。今回の感染拡大の要因と対策が明確ではないことや、政府のコミュニケーションが悪く、国民の不信感が増大しているようだ。
時事通信の12月の世論調査によると、菅内閣の支持率は43.1%で、前回調査に比べ5.2ポイント減となった。また、毎日新聞の調査では内閣支持率は40%で、前回調査から17ポイント減だった。
特に、政府の新型コロナ対策については、「評価する」が14%で、前回調査からの20ポイント減。「評価しない」は35ポイント増の62%となった。わずか1カ月で35ポイントという大幅な低下だ。
これらの世論調査結果をみれば、新型コロナ対策が評価されないために内閣支持率が低下したと解釈して間違いはないだろう。
確かに、この1カ月間は感染者が増加するにつれて、メディアや野党が「Go Toトラベル」が感染拡大の要因と断定し、「Go Toトラベル」停止などを求めた。これに対し、政府は停止や見直しについて一貫として消極的な姿勢をみせていた。
しかし、そもそもその時点で「Go Toトラベル」が拡大要因かどうかは分かっていなかったのだ。
11日に開かれた政府の「新型コロナウイルス感染症対策分科会」では、委員が、提出した「国内移動と感染リスク」と題したリポートで、「国内の移動歴のある例では移動歴のない例に比べて2次感染の頻度は高かった」「感染して移動している症例数は圧倒的に若年層に多い。また移動した後に2次感染を起こした人も若年層に多い」「移動に伴って他の地域に感染を拡げているのも主に若年層である」などと分析しているが、移動先においての感染状況などは示されていない。
つまり、移動したことで感染したのか、移動先での飲食などで感染したのかということさえ不明なのだ。しかし、国民はそのような情報、それも整理された情報に触れたいのだが、残念ながらそのような情報が出てくることはほとんどない。
政府は国民に対して「協力してほしい」とはいうものの、具体的にどのようにするかということを整理して、真正面から発信するということはほとんど行っていないに等しい。
確かに、厚労省をはじめとする各省庁や自治体のホームページなどにはさまざまな情報が提供されている。しかし、それをもって情報提供をしていると政府が胸を張るなら、それは大きな誤りだ。その結果、国民は民放テレビの情報番組などの有象無象の情報を信用したり、信頼したりするほかなくなるのだ。
行政や企業、市民などが相互に意思疎通を図ることをリスクコミュニケーションというが、新型コロナで政府がリスクコミュニケーションの発想を持っているとは言い難いのが現実だ。