巨大地震、台風に備える防災対策を
政府が先ごろ、地震や台風など災害対策などを実施する国土強靱化の新たな5カ年計画をまとめた。2021~25年度の5年間の事業規模は15兆円程度に達する見込みだ。一部メディアは事業規模などを批判しているが、日本列島が再び巨大地震に襲われる可能性も強く、着実な防災、減災対策が必要なことは言うまでもない。
新たな5カ年計画は、「激甚化する風水害や切迫する大規模地震等への対策」「予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けた老朽化対策の加速」「国土強靱化に関する施策を効率的に進めるためのデジタル化等の推進」の3つの対策を柱とし、個々の対策全体では123対策を実施する。
15兆円のうち、豪雨被害や大規模地震対策に12.3兆円、インフラの老朽化対策に2.7兆円、防災・減災分野のデジタル推進に2000億円をあてる見込みだ。
日本では南海トラフ地震や首都圏直下型地震などの地震の発生が懸念されている。政府の推計などでは南海トラフで巨大地震が発生すると最悪の場合、死者は30万人を超え、経済被害も200兆円を大きく超えると想定されている。
地震の規模は南海トラフより小さくなるが、首都圏直下型でも、最悪の場合で死者は約2万3,000人、経済被害は約95兆円に達すると想定されている。
いったん、こうした地震が発生すれば、東日本大震災のような悲劇が再び日本を襲うことになる。
しかし、その一方、建物の耐震化や火災対策、港湾における津波対策、地震時などに危険な密集市街地における対策など、さまざまな対策を実施すれば、確実に死者を減らすことはできるし、財産を守ることもできる。国土強靭化計画は、そのための計画だ。
こうした国土強靭化計画について、朝日新聞は12月8日の朝刊で「国土強靱化 総額ありきで進めるな」と題した社説を掲載している。社説は「防災・減災を口実に、必要性の乏しい公共事業まで行うことは許されない。菅首相が先週、策定を閣僚に指示した国土強靱化の長期対策は、いたずらに費用が膨らむのではないかとの懸念が募る」と指摘している。
信じがたいことに、この社説は「必要性の乏しい公共事業」が実際に行われるのかどうかも分からないまま、その仮定に立って批判しているのだ。その上で、「コロナ禍もあって、国の財政は危機的な状況にある。将来になって維持費がかさむ新規事業の実施は、慎重に検討しなければならない」などとしたり顔で指摘しているのだが、つい最近でも群馬県の八ッ場ダムや熊本県の川辺川ダムなど民主党政権は中止しようとしたり、実際中止したダムの必要性が実証されたばかりだ。
そもそも、津波対策や洪水対策の堤防の新設やかさ上げなどは人命にかかわる重要な事業だ。そして、災害はいつ襲ってくるかも分からない。社説は「慎重に検討」などとありきたりの言葉を使って批判しているが、災害対策は加速させればさせるだけ、人命を守るものだという視点はまったく持ち合わせていないようだ。
(terracePRESS編集部)