お定まりのように批判に明け暮れる新聞社説
政府が策定した追加経済対策について、各新聞が社説で論評している。しかし、近視眼的な思考しかできない一部の新聞社は、お定まりのように批判に明け暮れている。「批判するのもメディアの務め」とは言っても、あまりに単純でステレオタイプの批判は、国民にとってプラスになるどころか害悪ですらある。
毎日新聞は9日の朝刊で「コロナと追加経済対策 規模で不安は解消されぬ」と題した社説を掲載している。今回の対策について「財政支出が40兆円、民間の投資も含めた全体では70兆円超の大型対策」とする一方で、「医療機関への支援が少ない」などと感染対策として不十分なことを印象付けたり、防災・減災対策について「衆院選をにらんだ与党の歳出拡大要求に応じたものだろう」などと批判したりしている。
その上で「3次補正の財源は国債に頼ることになる。過去2回の補正で計60兆円近く発行しており、借金漬けはさらに深刻になる。いたずらに規模を押し上げると、将来へのつけ回しが増えるばかりだ」と結んでいる。
新型コロナが日本に発生して以降、歳出圧力は政府与党よりも野党やメディアの方が強かったのが実態だ。個人給付、事業者への給付など、ことあるごとに野党やメディアは叫んでいたのではないか。もちろん、それらの財源も国債だ。そうしたことには口をつぐんで、「将来へのつけ回しが増えるばかりだ」というのはあまりに無責任だろう。
ましてや、財政支出には景気の下支え効果があり、それが規模に連動することは常識だ。今回の対策の実質GDPへの経済効果は「3.6%程度」と試算されているが、景気対策という視点でみれば、現在の足元の30兆円に達する需給ギャップを埋める規模が必要となる。毎日新聞が、こうした状況を一切無視しているのか、理解できていないのかは不明だが、規模により経済に対する国民の不安を解消するというのも合理的だ。
ただし、今回の対策で想定されている国費30.6兆円のうち2020年度3次補正予算には20.1兆円、残りの10.5兆円は21年度当初予算に計上される見込みだ。このため、10.5兆円分が経済効果を発揮するか否かは、21年度予算の全体像にかかってくることになる。
さて、驚かされるのが東京新聞の「追加経済対策 財源への目配り足りぬ」と題した社説だ。論旨は毎日新聞の社説とほぼ同様で、「借金を次世代につけ回ししていることは確かだ」と批判している。そうであれば、国民に対して「我慢するべき」と主張すべきなのだが、そうしたことはしない。〝いい顔だけする〟というのがこうしたメディアの特性なのだ。
それは措くとして、東京新聞は「対策には、マイナンバーカード普及を目指すデジタル化推進策や災害を念頭に置いた国土強靱化への予算も多く盛り込まれている。デジタル化や防災が重要なことは理解はできる。しかし今、国民が望んでいるのはコロナ禍への直接的な対策のはずだ」と述べているのだ。
災害はいつ何時やってくるかわからない。大地震、台風、豪雨などが多くの人命を奪ってきた。東京新聞は、その災害対策を国民は望んでいないと断言している。批判のための批判という姿勢でいると、こうした暴言にも等しい主張さえなんとも思わないのだろう。
(terracePRESS編集部)