「活力ある地方を創る」菅政権に地方分権への期待
政府は先ごろの閣議で、地方分権改革をめぐり2020年の地方自治体からの提案に対する対応方針を決定した。菅政権では初の分権方針。142件について新たに対応することが決まり、法律改正が必要な対応については21年の通常国会に一括法案を提出する見込みだ。菅政権は「活力ある地方を創る」を最重要政策の一つとして掲げており、今後、地方分権に向けたさらなる取り組みも期待される。
地方分権改革は、2014年から地方自治体が改善を求める「提案募集方式」を導入している。2020年分は地方から168件の提案があり、このうち「引き続き検討」としたもの57件を含め新たに142件を「提案の趣旨を踏まえ対応」とし、15件を「現行規定で対応可能」とした。提案数に対する実現・対応の割合は93.5%となっており、自治体の要望はほぼ認められる形となっている。
今回の対応方針では、兵庫、滋賀、京都、大阪、和歌山、鳥取の府県などからあった提案「乳がんの集団検診(マンモグラフィ)における医師の立会いを不要とする見直し」は、要望通り「医師の立会いを不要とする方向で検討」するとされた。
また、長野県などが提案した「郵便局において取扱いが可能な地方公共団体の事務の拡大」も要望通り、「転出届及び印鑑登録の廃止申請の受付等の事務について、郵便局における取扱いを可能とする」などとしている。転出届は現在、市区町村窓口や郵送での届け出が必要なため、受付場所を増やすことで利便性を向上させることとなる。転入届はこれまでと同様、市区町村窓口での手続きとなる。
中核市市長会が要望した「地方公共団体の歳入全般についてコンビニ収納を可能とする見直し」は、「地方公共団体の財務に関する制度全般の見直しにおいて検討」とし、2022年度中に結論を得る方針とされたが、要望に沿って認められる見通しだ。
菅首相は、今回の方針を決定した地方分権改革推進本部会合で「地方分権改革の推進は、地域が自らの発想と創意工夫により課題解決を図るための基盤となるものだ。地方分権改革に関する提案募集方式は、本年で7年目になるが、地方から数多くの提案を頂き、きめ細かく検討した結果、本日、その9割の提案の実現を図る対応方針を決定した」と述べている。
しかし、現行の方式が曲がり角に来ていることも事実だ。地方からの提案数をみると、現行制度がスタートした2014年こそ535件あったが、その後は200前後となり、2018年が188件、19年が178件となり20年は168件まで減少している。これまでの取り組みで、すでに自治体が求めるような改善点が少なくなってきているのか、はたまた、首相が述べたような「地域が自らの発想と創意工夫により課題解決を図る」ために熱意が薄らいできたのかは不明だが、現行方式を続けても頭打ちになる恐れも否定できない。このため、菅政権には新しい地方分権への取り組みも期待したい。
(terracePRESS編集部)