AI活用した接触・確認アプリの再構築を
新型コロナウイルス感染症の急激な拡大で、各方面から外出を厳しく制限するロックダウン(都市封鎖)の導入検討を求める声が相次いでいる。菅首相は「日本でロックダウンという手法はなじまない」としているが、私権制限につながるだけに緊急事態条項の新設など憲法改正論議の中で検討すべきで安易な導入は避けるべきだ。一挙にロックダウンではなく、AIの徹底した活用などそれ以前に検討すべき対策も多いだろう。
ロックダウンをめぐっては新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身分科会長が5日、記者団に「ロックダウンみたいなことを法制化してくださいというようなことさえ、議論をしてもらわなければいけないことになる」と言及し、全国知事会の飯泉会長も6日、西村担当相とのオンライン会談で「日本版のロックダウン制度などについても、今すぐは難しいかもしれないが、ぜひ立法府とともに検討に入ってほしい」と要請している。
最近の感染の急激な拡大を目にすれば、ロックダウンを求める声が出るのも理解できるが、ひとっ飛びにロックダウンというのではなく、やるべき対策はまだ数多い。AIの活用もその1つだ。
総務省情報通信政策研究所の「AIネットワーク社会推進会議」が先ごろまとめた「報告書2021」では、新型コロナへの対応でのAI利活用に関する国際比較をしている。
今回の調査は「接触確認・追跡アプリに関する取組について調べているが、「政府による強制度合い」「収集データの範囲」「AI利活用の範囲」などで国・地域によって比較的大きな差異が見られたという。
アプリは大別すると「必須」と「任意」に大別できる。「必須」は強制力を伴うもので、「全国民に必須」としているのが中国、「隔離者/入国者は必須」としているのが韓国、台湾だ。中国はアプリの目的を「接触確認や追跡の徹底により、感染者の早期発見・隔離・診断・治療を促す」としている。
これに対し強制力のない「任意」は、利用については自由だが「デメリットがある」ケースと、「デメリットなし」があり、前者は英国、シンガポールで、後者は日本、米国、フランス、ドイツ、エストニア、フィンランド、イスラエルが該当する。
英国、シンガポールのデメリットは、例えばショッピングモールでアプリの提示を求めたりすることだという。これらの国は「ユーザーの行動を確認・追跡することで感染拡大防止を図る」ことをアプリの目的としている。
もう一方の「デメリットなし」のアプリは、利用しないことによるデメリットもなく、あくまでも個人の自由だし、個人の特定もしない。その目的は「感染リスクを提示し、国民の不要な行動を抑止する」ことにあり、直接的に感染拡大防止をしようというものではない。
日本の接触確認アプリ「COCOA」のダウンロード数は8月3日現在で約3,000万件となっているが、不具合問題で国民の万全な信頼を得ているとも言い難いのが実情だ。ロックダウン同様、日本では強制力を伴う「必須」とするのは難しいだろうが、自由でありながらデメリットを付与するようなアプリへと再構築することも検討すべきだろう。
(terracePRESS編集部)