沖縄知事選の〝民意〟は民意なのか?
先ごろ行われた沖縄知事選で、現職の玉城デニー知事が再選を果たした。言うまでもなく玉城氏は名護市・辺野古の米軍キャンプシュワブと沖合に米軍普天間飛行場の代替施設を建設することに反対を主張した。選挙結果を受けてメディアなどは代替施設の建設反対が〝民意〟と主張しているが、知事選の結果が真の「民意」となるのか。
今回の選挙では玉城知事が辺野古への移設に反対、前宜野湾市長の佐喜真淳氏が容認、元衆院議員の下地幹郎氏がさらなる埋めたてに反対しながらも埋め立て部分を活用という図式だった。
下地氏は現在の普天間飛行場での訓練を、自衛隊基地の建設計画が進んでいる鹿児島県西之表市の馬毛島に移転することで普天間飛行場の早期の危険性除去を訴えていたが、辺野古については「埋め立て部分の活用」を主張していたので、辺野古の代替施設への是非ということで言えば、容認ということになる。つまり、玉城氏が「反対」、佐喜真、下地の2氏が「容認」ということだった。
さて、この選挙結果を受けて、メディアは「沖縄県の民意が示された」などと伝えている。
朝日新聞は13日の「沖縄県知事選 県民の意思は明らかだ」との社説で「米軍普天間飛行場を移設するために名護市辺野古の海を埋め立てようという政府の方針に、知事選で3度連続して『ノー』の意思が示されたことになる」と指摘。
毎日新聞も「玉城沖縄知事が再選 国は『アメとムチ』脱却を」と題した社説で「米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に反対する『オール沖縄』候補の知事選勝利は、3回連続である。『辺野古ノー』の民意が改めて示された形だ」と述べている。
また、地元沖縄の琉球新報も「玉城氏が知事再選 『辺野古』断念が民意だ」との社説を掲載している。
今回の選挙では玉城氏が33万9767票、佐喜真氏が27万4844票、下地氏が5万3677票を獲得している。
この結果を持ってメディアなどは「民意が示された」と主張しているのだが、辺野古施設を容認している佐喜真氏と下地氏の獲得票を合わせると32万8521票となり、玉城氏との差は1万1246票に過ぎないのだ。これでは圧倒的多数で建設反対の意思が示されたとは言えないだろう。
ましてや投票率は57.92%。そして、その投票率による有効投票数に対する玉城氏の得票率は49.4%に過ぎない。少なくとも今回の選挙結果で「辺野古反対が民意」とは言えないだろう。
民主主義の基本である多数決の原理は、政府を組織し、公共の課題に関する決断を下すための手段であるから、玉城氏が当選したことは、代替施設に反対する知事が沖縄県の地方政府を今後4年間、組織するということだ。それこそが選挙結果が示すものであり、それは間違いない。
しかし、沖縄県民の民意が辺野古の代替施設に反対するというものではないのだ。もちろん賛成ということでもない。
それにも関わらず、「民意」「民意」とメディアは書き立てているが、そうしたメディアの非合理な報道が、沖縄県の分断を加速させていくのだろう。
(terracePRESS編集部)