「新しい資本主義の起動」で始まる「成長」と「分配」
政府は先ごろ、「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」を策定した。政府はこの経済対策をもとに、補正予算と来年度予算を「16カ月予算」とし、切れ目のない経済対策を展開する。同時に今回の対策は、「成長と分配」という岸田首相の方針を具体化、スタートさせるものとなり、今後、成長戦略とともに分配戦略も展開する。
今回の対策は、事業規模で78.9兆円程度、財政支出で55.7兆円程度に達する。新型コロナウイルス感染症の拡大に直面し始めた昨年4月に策定した「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」の財政支出38.1兆円をも大きく上回る過去最大の経済対策となった。それは、岸田首相の経済再生に強い意欲を示したものだ。
財政支出の内訳をみると、「新型コロナウイルス感染症の拡大防止」が22.1兆円程度、「『ウィズコロナ』下での社会経済活動の再開と次なる危機への備え」が9.2兆円程度、「未来を切り拓く『新しい資本主義』の起動」が19.8兆円程度、「防災・減災、国土強靱化の推進など安全安心の確保」が4.6兆円程度となっている。
ちなみに、足元の経済対策としては、経済対策による支出が直接的に実質GDPを下支え、押上げることになるが、その効果は5.6%程度と見込まれている。
今回の対策は大きな3つの狙いがある。その1つが新型コロナ対策、もう1つが経済の下支えや景気の下振れリスクへの対応など「足元の経済対策」、そして3つめが「新しい資本主義の起動」となる。
「新しい資本主義」とは、経済を成長させ、その果実を原資として分配に取り組むことで、国民の所得を引き上げ、さらなる成長につなげていく。つまり「成長と分配の好循環」を実現する社会のことだ。
対策で示した成長のための戦略は「科学技術立国の実現」、「デジタル田園都市国家構想」、「経済安全保障」の3つの柱とした大幅な投資。イノベーション力の抜本的な強化やクリーンエネルギーの推進で経済と環境の好循環を実現するほか、「デジタル田園都市国家構想」を推進し、デジタル技術を活用し、地方から変革の波を起こすとしている。
こうした成長戦略とともに重要なのが「分配戦略」だ。分配戦略として、「賃上げへの支援」、「人的資本への投資や働き方改革」、「非正規雇用労働者等への分配強化」、「公的価格の在り方の見直し」、「子供・子育て支援」などを実施する方針だ。
こうした政策により岸田政権は「誰一人取り残されることなく、国民全員が参加・活躍できる社会、頑張った人が報われる、正しい活躍が正しく評価される社会」を構築することを目指していく。
「新しい資本主義」とは、〝成長優先〟でも、〝分配優先〟でもなく、持続的な成長と分配の好循環が実現する社会だ。新型コロナを乗り越えて国民の暮らしや雇用、事業を守ることのできる社会だ。
経済対策は「経済を自律的な成長軌道に乗せることで、経済対策の暖かい風を、全国津々浦々まで行き渡らせていく」との決意を示しているが、それが岸田首相の思いそのものなのだろう。
(terracePRESS編集部)