国民の安全は二の次?

政府が、日本の安全保障の指針となる防衛計画の大綱に、海上自衛隊の「いずも」型護衛艦を改修し、短距離離陸と垂直着陸ができるSTOVL機の運用を可能とするよう必要な措置を講じることを盛り込んだ。

来年の通常国会では野党が「憲法に基づく専守防衛を逸脱する」などと批判することが容易に想像できるが、安全保障問題でも島国根性丸出しの野党では、建設的な議論すら困難なのだろう。

 

安全保障を考える上で重要なことは、もちろん憲法があるが、これと並び重要なことは、日本を取り巻く安全保障環境がどのようになっているか、という視点だ。

 

しかし、日本の安全保障環境がどのように推移しているかなど、一般の国民には分かりにくいし、野党も関心を持っていないようだ。

 

以下の一文をみてほしい。これは10年前、2008年版防衛白書の中国に関する記述で、全体で400字にも満たない。

「今日、政治的・経済的に地域の大国として重要な影響力をもつ中国は、各国がその動向に注目する存在になっている。中国は継続する高い国防費の伸びを背景に軍事力のさらなる近代化を推進しているが、その現状や将来像が明確にされていないため、中国の軍事力が地域情勢やわが国の安全保障にいかなる影響を与えていくのかが懸念されるところである。さらに、中国の安全保障や軍事に関する意思決定プロセスについて、透明性が十分に確保されていないことにより各国が不信感や誤解を抱く可能性が指摘されている。(略)」

 

しかし、これが2018年版では、

「(略)中国は、独自の国際秩序を形成しようとする動きを見せているほか、継続的に高い水準で国防費を増加させ、十分な透明性を欠く中で軍事力を広範かつ急速に強化している。特に、中国は、周辺地域への他国の軍事力の接近・展開を阻止し、当該地域での軍事活動を阻害する非対称的な軍事能力の強化に取り組んでいるとみられるほか、昨今、実戦を意識した統合運用体制の構築などを念頭に、大規模な軍改革を急速に具体化させている。

また、中国は、東シナ海や南シナ海をはじめとする海空域などにおいて質・量ともに活動を急速に拡大・活発化させている。特に、海洋における利害が対立する問題をめぐっては、力を背景とした現状変更の試みなど、高圧的とも言える対応を継続させ、自らの一方的な主張を妥協なく実現しようとする姿勢を継続的に示している。

わが国周辺海空域においては、中国公船が尖閣諸島周辺のわが国領海への侵入を繰り返し行っているほか、中国海軍艦艇及び航空戦力は、尖閣諸島周辺を含めてその活動範囲を一層拡大している。(略)」などとなっている。

 

ここでは紹介できないほど質、量ともに記述が増えている上、白書は「中国は、独自の国際秩序を形成しようとする動きを見せている」「中国の動向は、わが国を含む地域・国際社会の安全保障上の強い懸念となっており」などと、すでに日本の脅威となっていると分析指摘している。

たった10年で、日本を取り巻く安全保障環境は、このように変化したのだ。激変と言ってもよい。核・ミサイルを保有している北朝鮮の動向も同様だ。

 

軍事的脅威を測る指標には「意図」と「能力」がある。意図があっても能力がなければ脅威にはならない。また、能力があっても、意図がなければ、平和的な関係を構築することはできる。

しかし、例え現在は平和的な姿勢をみせていても、その意図や意思は、短期間で変わる可能性があることを忘れてはならない。だから、日本にとって備えるべき他国の軍事的脅威は、近隣諸国の「意図」ではなく「能力」を基に対処しなければならないのだ。

 

これだけ、日本を取り巻く安全保障環境が変化しているのだから、日本の防衛力も変わるのが必然だ。防衛力を議論するうえで憲法はもちろん大事なのだが、野党のように、憲法の規定だけを議論の指標にし、備えをおろそかにするのは、もはや国民の生命や財産をおろそかにするということと同義でもある。