期待したい春闘 成長と分配の循めざす岸田政権

トヨタ自動車やホンダが今春闘で、労働組合の要求に満額回答するなど、今春闘に期待が高まっている。資源高や円安で物価が上昇している中で、岸田政権は春闘の後押しをし、成長と分配の好循環を実現することを目指している。
労働組合の中央組織「連合」によると、3月1日正午時点で春闘の要求提出済み組合は3,231組合。そのうちうち月例賃金改善(定昇維持含む)を要求した組合は2,746組合で、いずれも昨年を上回ったという。
平均賃金方式で賃金引き上げを要求した2,614組合の平均は13,338円・4.49%(加重平均)で、4%を上回ったのは1998以来25年ぶりとなった。
岸田首相は1月5日に開かれた経団連など経済3団体の新年祝賀会で、今春闘に対し「インフレ率を超える賃上げの実現をお願いしたい」と要請。そのうえで「能力に見合った賃上げこそが企業の競争力に直結する」と訴えた。
また首相は1月23日に行われた国会での施政方針演説で、「企業が収益を上げて、労働者にその果実をしっかり分配し、消費が伸び、更なる経済成長が生まれる。この好循環の鍵を握るのが、『賃上げ』だ」と強調した。
そのうえで、公的セクターや、政府調達に参加する企業の賃金を引き上げるほか、中小企業の賃上げ実現に向け、生産性向上、下請け取引の適正化、価格転嫁の促進、フリーランスの取引適正化といった対策などを強化する考えを示した。
周知の通り現在、円安による原材料の高騰などによる物価上昇が続いている。原材料高で企業の製品、商品の値上げが相次いでいるが、これまでのデフレ傾向の市場では、企業は競争力の観点から値上げをしたくともできない状況が続いていた。しかし、その〝たが〟は外れ、値上げをしやすい状況となった。
企業が値上げをできる状況を作り出した円安は、ある意味〝神風〟となったのだ。
値上げを実施した企業が今後、やらなければならないのは賃上げだ。賃上げをしなければ、やがてそのツケは企業に返ってくる。
岸田政権は賃上げができる環境づくりに取り組んでいるが、今春闘の行方が日本経済の先行きを決めると言っても過言ではない。