「私は許さない」と贖罪求める前愛媛県知事
「天災は忘れたころにやってくる」とは、自然災害はその被害を忘れたときに再び起こるものだという戒めだ。自然災害はいつやってくるか分からない。だから、平素から災害への備えが必要となる。安倍政権が、現在進めている国土強靭化は、まさに平素から大災害に備えるための、ハード、ソフトを含めた国土づくりだ。
では、もしその備えを怠ったとしたらどうだろう。それは自然災害とはいいながらも、実は、人災と言うべきことになる。
昨年7月の西日本豪雨で死者32人、行方不明者1人を出すなど大きな被害を受けた愛媛県では、参院選で自民のらくさぶろう氏、元衆議院議員で野党統一候補である無所属の永江孝子氏、諸派の椋本薫氏の3氏が立候補している。当然のことながら、選挙では災害対策も大きなテーマとなっている。
この選挙戦では、加戸守行・前愛媛県知事による、らくさぶろう氏への応援演説が、政治の責任、防災・減災に関連し〝正義、政治のあり方〟を論じたものと注目を集めた。
加戸氏によると、知事在任中に策定した鹿野川ダムの改造による洪水対策が、2009年に「コンクリートから人へ」とのスローガンを掲げて誕生した民主党政権により、ストップせざるを得なくなったという。
加戸氏はこの点について「形式だけのダム検証委員会を設け、そして当時の民主党愛媛県連代表・永江孝子さんが中止・凍結の結論を出した。私は愛媛県の生命・身体・財産を預かる大切な立場。その県知事の加戸守行の一言、意見も聞くことなく、この鹿野川ダムの改造工事をストップした」と振り返っている。
そしてこの改造工事は3年間凍結されたものの、計画が復活して先ごろやっと完成したという。
もし、凍結がなく、3年前に完成していれば2390万トンという巨大なスペースができ、別のダムと連動させるような運用をすれば、西日本豪雨の被害も別なものになったのだろう。
加戸氏は「(愛媛県内の)西予市・野村地区での600世帯の浸水や、5名の死者というような事故はなかったと思うし、東大洲地区の3000戸の被害もほとんど防げた」と述べている。
その上で加戸氏は、永江孝子氏が豪雨の際に宇和島市のミカン被害地帯に救援物資を積んで慰問に行ったことなどを紹介して「立派な方」としながら、「でも彼女がすべきことは、その前に野村地区に行って、亡くなられた5人の位牌の前に両手を合わせて『私の政治判断が間違いました』とお詫びを言ってから慰問に回るべきではなかったのか。政治は結果責任で、お詫びすべきだ。胸は痛まないのか」と語気を強めて語っている
さらに「有権者がいかに許そうと、10年前の愛媛県知事・加戸守行は、絶対に、この3年間の凍結工事は許さない。政治判断、政治決定するときの最高責任者は、反省するべき責任を背負って、贖罪して、償いをしてから再び政治の道を歩むべきである」と指摘している。
自然災害への備えを怠れば、それは人災とも言える。民主党政権のダム凍結は人命を軽視し、実際に多くの人の命を奪う結果となったのだ。愛媛県だけの話ではない。民主党を源流とする立憲民主党、国民民主党は、「贖罪しなければならない」という加戸氏の渾身の言葉に、どう答えるのか。
(terracePRESS編集部)