インド太平洋の平和維持に向けた日豪協力の深化
日本とオーストラリアはこのほど、新たな安全保障協力に関する共同宣言に署名した。アジア地域では中国の軍事的な台頭が懸念されており、日豪両国がインド・太平洋地域の秩序維持において連携する。両国が〝準同盟〟の関係を構築することで、一方的な現状変更の試みへの強力なメッセージとなり、アジアの平和維持に向けた体制構築が新たな段階に入った。
「安全保障協力に関する日豪共同宣言」は先ごろ、オーストラリアを訪問した岸田首相と、オーストラリアのアルバニージー首相が署名した。
宣言は、「我々、日本及びオーストラリアの両首相は、ここに、包摂的で強靱な自由で開かれたインド太平洋の柱である日本及びオーストラリアとの間の極めて重要な『特別な戦略的パートナーシップ』を再確認する」と明記。「これからの10年にわたって、我々の包括的な関与を深化し、拡大するための前向きでかつ意欲的な構想にコミットする」と、今後10年間に関係を強化する方向を示した。
その上で、インド太平洋地域の軍事的な緊張が高まっていることを前提に「日豪の主権及び地域の安全保障上の利益に影響を及ぼし得る緊急事態に関して、相互に協議し、対応措置を検討する」とし、相互協力の促進などを明記した。
日本とオーストラリアはすでに、米国、インドとともに安全保障や経済を協議する枠組みである「クアッド」を結成し、自由や民主主義、法の支配といった共通の価値観をもつ4カ国としての取り組みを進めている。
今回の共同宣言では「二国間パートナーシップはまた、我々の安全保障、並びにインド太平洋の平和及び安定に不可欠な柱である両国それぞれの米国との同盟関係を強化する。米国との三国間協力の深化は、我々の戦略上の連携、政策調整、相互運用性及び共同能力を強化するために不可欠である」としており、それぞれ米国との関係の強化や3国間の強化をすることも言及した。
日豪の具体的な今後の取り組みについては「より洗練された共同訓練及び活動、並びにパートナーとの多国間演習、整備を含む施設の相互利用、武器等防護、人的連携及び交流を通じて、自衛隊とオーストラリア国防軍との間の、実際的な協力を拡大、深化させ、相互運用性を更に強化する」とし、抑止力強化に向けた共同訓練や演習などを拡大する。
宣言は、中国に対する名指しは避けているものの、「自由で開かれたインド太平洋への揺るぎないコミットメントを確認する」とし、中国が影響力拡大を目指す太平洋島しょ国との関係強化に取り組む意向も表明している。
両国の首脳会談では、岸田首相がいわゆる「反撃能力」を含め、5年以内に日本の防衛力を抜本的に強化する決意を表明、アルバニージー首相がこれを強く支持した。
オーストラリアを含め各国との連携強化を促進する一方で、日本が防衛力を強化することがインド太平洋地域の安定を図ることにつながることは間違いない。インド太平洋地域の安定について日本の役割は重要性を増している。
(terracePRESS編集部)