防衛費で議論できないのは野党やメディアの責任
2020年度の予算編成に向けた各省庁の概算要求が先ごろ出そろった。社会保障費や防衛費などが膨らみ、要求総額は過去最大の105兆円前後になる見通しで、概算要求段階では6年連続の100兆円を超えた。
消費増税の景気への影響を抑える経済対策などは別に盛り込む方針となっており、最終的な当初予算額は2年連続で100兆円を超える見込みだ。
さて、今回の概算要求で注目された予算の一つが防衛費だ。防衛省の概算要求は約5兆3000億円。
宇宙・サイバーといったこれまでにない領域での防衛力強化についても盛り込んでいる。具体的には、不審な人工衛星を監視するなど宇宙領域での防衛力強化として、20人規模の「宇宙作戦隊」を新設する費用や、護衛艦「いずも」の改修、その「いずも」に搭載する最新鋭ステルス戦闘機F35Bの6機の購入費などが含まれている。
さて、この防衛費について朝日新聞が9月1日付け朝刊で「防衛概算要求 国会は監視機能果たせ」と題した社説を掲載している。
社説は護衛艦「いずも」の改修やF35Bの購入などに焦点を当て「空母の保有や米国製の高額兵器の購入が、どこまで日本の防衛に役立つのか。政府は限られた予算の中で、費用対効果や優先順位を見極め、導入の狙いや運用方法について、正面から国民に説明を尽くすべきだ」と政府の姿勢を批判している。
その上で、「昨年末に『防衛計画の大綱』『中期防衛力整備計画』が改定されたが、これまで国会の監視機能が十分に果たされたとは言いがたい。近隣外交のあり方も含め、日本の安全保障についてどんな見取り図を描くのか。年末の予算編成に向け、臨時国会での徹底論戦を求める」と結んでいる。
朝日新聞の指摘の意図がそうなのかどうかは分からないが、確かに、国会で議論が尽くされているかどうかは疑問のところもある。
しかし、そのように「議論が尽くされていない」としたら、それは、野党による質問のレベルが低かったり、政権批判だけを繰り返したりしていることに起因しているのだ。
日本を取り巻く情勢は、10年前と比べても格段に変わってきている。中国の軍事力の増強、北朝鮮による核やミサイル保有など日本の領土や国民への脅威が増していることは疑う余地がない。
この社説のように「国会の監視機能が果たされたとは言い難い」というのなら、野党もこれらの脅威に対して、日本の安全をどのように確保するかという政治家本来の責務に立って議論しなければならない。
社説は、「いずも」の改修やF35Bの購入などを「対米配慮」と断じ、「対米配慮に偏ることなく、真に有効な防衛のあり方を考え抜かねばならない」と指摘しているが、その前提となる日本を取り巻く安全保障環境の変化に目を向けず、単に「対米配慮」と断ずる姿勢である限り、防衛費について論じることなどできないだろう。