「ウィンウィン」と考えられない野党の稚拙
安倍首相とトランプ米大統領が先ごろ、日米貿易交渉が最終合意に達したことを確認し、共同声明に署名した。日本はアメリカが求める牛肉や豚肉などの農産品の市場開放にTPP協定の水準を超えない範囲で応じる一方、米国は協定の履行中は日本車への追加関税を発動しないという内容で、安倍首相は「両国のすべての国民に利益をもたらすウィンウィンの合意となった」と述べている。
日本にとっては、懸案だった日本車への追加関税や数量規制が回避されたことは、大きなメリットになることは間違いない。日本にとって米国は最大の自動車輸出相手であり、その規模は2018年で4兆5,241億円に達している。その重要な輸出品目への追加関税を回避できたことは大きなメリットとなる。
しかし、いつもながらのことだが、今回の貿易交渉の結果に一部メディアや野党はいちゃもんをつけている。立憲民主党は、「日本から米国への輸出額の3割以上を占める自動車に関しては『さらなる交渉による関税撤廃』という表現が盛り込まれたものの、具体的な期限などは示されておらず、農業分野などを含め日本側が一方的に譲歩した感は否めない。加えて、今後の交渉日程についても不透明であり、安倍総理が言うような『両国のすべての国民に利益をもたらすウィンウィンの合意となった』とは、現時点では評価できない」との逢坂政調会長名のコメントを出している。
国民民主党も泉政調会長名で「政府は、トランプ大統領の自動車に対する数量制限や追加関税の脅しに完全に屈服し、農林水産品の市場を差し出しただけで、全くウィン・ウィンとなっていません」などとしている。
ここまでくると、もはやいちゃもんといっても、重箱の隅をつつくいちゃもんでしかない。
そもそも、牛肉や豚肉などの農産品の市場開放は、日本の消費者がメリットを受けるものだ。このコメントを読めば、立憲や国民は、消費者がメリットを受けることに反対なのだと考えたくなる。
日本から米国への自動車輸出の関税撤廃は先送りされたが、逆に言えばこれは米国の消費者がメリットを受けることが先送りされたということだ。
もちろん、国内農業は食糧安保の観点からも維持しなければならないし、発展させなければならない。国際的な競争力をつけるもの必要だ。
そして、その対策はTPPですでに行われている。現在、多角的な農業対策が行われているのだ。IOTを活用した農業の導入などが行われているし、輸出拡大もそうだ。事実、農林水産物・食品の輸出は2012年に4,497億円だったのが、2018年には9,068億円にまで拡大している。こうした取り組みが〝攻めの農業〟を作るということだ。
立憲や国民などのように農産品の市場さえ守ればよいということでは、消費者は自由貿易のメリットは受けられないことになる。
まずは批判するということでは、責任ある政治はとてもできないだろう。
(TerracePRESS編集部)