代表質問で堂々と主張する安易な経済政策
国会の議論を聞いていると、野党は本当に国民の生活を守ることができるのか。そんな疑問がふつふつと沸き起こっている。
立憲民主・国民・社保・無所属クラブの共同会派の枝野立憲民主党代表の代表質問もそうだ。
枝野氏はここで経済政策のあるべき姿を述べている。そこで主張したのは「社会保障の充実を図り、税制も大きく見直して所得再分配機能を強化し、貧困や格差を解消に向かわせる。特に、介護や保育に代表される老後や子育てなど暮らしの安心に関わる人件費を厚くして人手不足を解消し、将来不安を小さくする。希望する非正規労働者をできるだけ早く正規雇用に転換しつつ、実質賃金を引き上げる。これこそが、これからの時代の最も効果的な消費拡大策であり、経済対策です」というものだ。
確かに社会保障の充実は重要だ。だからこそ安倍政権が取り組んでいる「全世代型社会保障」がそうだ。全世代型社会保障とは、ライフスタイルの多様化に即して、意欲ある高齢者への70歳までの就業機会の確保や、予防医療や介護の充実の促進、同一労働同一賃金によって正規・非正規の壁をなくし、厚生年金の適用範囲を拡大、老後の安心を確保しようというものだ。
これはまさに、枝野氏の主張のように人で不足を解消し、将来不安を少なくしようというものだ。国民が不安を抱きながら生活するような国では経済成長ができないことは当然だ。
しかし、問題なのは、枝野氏が国民の不安を取り除けば経済成長ができる、と主張していることだ。これはあまりにも稚拙ではないか。
これからの日本が経済成長を果たしていくためには、イノベーションが不可欠だ。AIやIoT、ロボット、ビッグデータ、ブロックチェーンなどの「第4次産業革命」といえるデジタル技術とデータの活用をテコに技術革新をしていくことが重要だ。
その中核をなすものが、政府が進めているSociety 5.0の実現だ。これはサイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムによって、経済発展と社会的課題の解決を両立しようというもので、そこの中心に人間がいるというものだ。
今まさに、日本が第4次産業革命をリードできるかどうかを決する時期とされている。「ここ1、2年が勝負」との見方もある。
もちろん、日本が成長していくためには、これだけやればいいということでもない。保育園や幼稚園の無償化を実施したように、少子高齢化が進む中で様々な対応が必要だし、地方の活性化も重要だ。
いずれにしても、枝野氏が主張するように実質賃金さえ上がれば経済が活性化できると考えるのは安易だ。このようなシンプルな提言しかしないから国会の議論が低迷するのだろう。
(terracePRESS編集部)