「言ったもの勝ち」でいいのか?
新型コロナウイルス感染症の感染拡大が進むにつれ、日本では「言ったもの勝ち」が蔓延している。SNSなどで一般国民が発信するのならまだしも、立憲民主党、国民民主党、共産党などの野党や民放テレビのキャスターやコメンテーターなど、政府の対応を批判するだけで対案は一向に出てこない。
対案らしきものがあったとしても、実現可能性や根拠もない数字を並べたてたものさえある。
例えば、共産党は先ごろ「感染爆発、医療崩壊を止める緊急提案 外出自粛・休業要請と一体の補償、検査体制強化と医療現場への本格的財政支援を――新型コロナ対策補正予算案への提起」と題した文書を公表した。
そこでは、政府が策定した「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」に基づく補正予算について「PCR検査、ベッドや軽症者の宿泊療養施設確保など、すべて含めて医療体制支援は、わずかに1500億円程度にすぎません。マスクの確保、治療薬の開発など、その他の予算をふくめても8000億円程度です。こんなわずかな予算では、医療崩壊を止めることはできません」と述べている。
しかし、「こんなわずかな予算では、医療崩壊を止めることはできません」と言いながら、具体的な対策とそれに必要な予算額すら示していない。「補正予算案への提起」のはずなのに、「提起」にすらなっていない。まさに「言ったもの勝ち」のようなものだ。
確かに「医療機関のコロナ対策にかかる費用の全額補償」や「軽症者、無症状者のための宿泊療養施設を大規模に確保」「不足している医療用マスク、フェイスシールド、防護服、消毒液、人工呼吸器など国の責任で必要数を確保」という具合に、具体策らしきものはあるにはあるが、すでに補正予算案に入っているものや実現が困難なものだったりする。
そもそも補正予算では「感染拡大防止策と医療提供体制の整備及び治療薬の開発」として計上されているのは1兆8097億円だ。
例えば、「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(仮称)」としては1490億円を計上し、PCR検査機器整備、病床・軽症者等受入れ施設の確保、人工呼吸器等の医療設備整備、応援医師の派遣への支援など活用する。
また、アビガンの確保は139億円、産学官連携による治療薬等の研究開発200億円、国内におけるワクチン開発の支援100億円、国際的なワクチンの研究開発等216億円などとなっている。
この共産党の提言は一例だが、具体的な対案も示さないまま批判することは誰でもできる。しかし、政党である限り「言ったもの勝ち」では済まされないはずだ。新型コロナウイルス感染症対策では政府・与党の責務が問われているが、実は野党の力量も試されているのだ。しかし、残念ながら、野党はその期待に応えられない存在のようだ。
(terracePRESS編集部)