納得できる岸田首相の厳しい対ロ非難
岸田首相が16日の記者会見でウクライナを侵略したロシアを激しく糾弾した。これまでの日本だったらロシアへの配慮が見え隠れしたものだが、首相自らが強いメッセージを出した意義は深い。ロシアの暴挙を止めさせるためには、今後も先進各国と歩調を合わせた対ロ制裁が必要だ。
岸田首相は会見で「本日は戦争が続くウクライナ情勢への対応と新型コロナ対応についてお話をいたします」と口火を切ってから、新型コロナ対応よりも先にロシアの侵略について言及した。
新型コロナは、新規感染者が減少し始める中で、今後は経済との両立をどう図っていくか重要な局面に入っているが、それにも増してウクライナ情勢が重要だという認識で、もちろんそれは間違いではない。
首相はロシアの侵略について「ロシアの今回の暴挙は歴史に刻むべき非道な行為。自由、人権、法の支配といった普遍的価値を守り抜くため、わが国は断固としてこれを糾弾する。そして米国や欧州などG7と連携して、事態の展開にあわせて機動的に厳しい対露制裁措置を講じていく」と指摘した。
しかし、先進各国の対ロ制裁、それに対するロシアの対抗措置などでエネルギー価格が高騰したり、穀物市場が逼迫したりするなどで日本の経済社会にも悪影響が出る可能性が高まっている。特に、エネルギー価格の高騰は、輸入に頼る日本を直撃する。
こうした状況に対して岸田首相は「ウクライナ国民とともにあることを示すためにも、国際社会の平和と秩序を守り抜くためにも、ロシアの揺さぶりや脅しに屈することは決して許されない。われわれは侵略と戦い、祖国を守るため懸命に行動するウクライナの人々を断固たる決意で支援をする」と力強く語った。
こうした岸田首相の決意のもと、政府は対ロ制裁の強化を決めた。具体的には①ロシアに対する貿易優遇措置である最恵国待遇を撤回②ロシア向けのぜいたく品の輸出禁止とロシアからの一部物品の輸入禁止③IMF、世界銀行、欧州復興開発銀行を含む主要な多国間金融機関からロシアが融資を受けることを防ぐようG7で連携④プーチン大統領に近いエリート層などに対する資産凍結の対象範囲を拡大、などとなっている。
もちろん制裁ばかりではなく、ウクライナ支援も実施し、ウクライナや周辺国に対し、1億ドルの緊急人道支援を実施する。
いずれにしても、ロシアのウクライナ侵略の影響は今後、顕在化してくる。政府はすでに、経済全体や家計への影響を緩和する対策として、ガソリン価格を172円程度に抑える激変緩和措置など当面の対応を決定している。
バイデン米大統領は、ロシア産の原油や天然ガス、石炭の輸入禁止などを表明した演説で、市場価格の安定化対策を講じるとした一方で「アメリカも犠牲を払う」と語った。
日本もガソリンなどの価格対策が求められることは言うまでもないが、日本も犠牲を払うという認識は共有することが不可欠だ。
(terracePRESS編集部)