2040年問題を乗り越える地方行政を
2025年。いわゆる団塊世代が後期高齢者(75歳以上)に達する年だ。介護や医療費などの社会保障などの費用が急増すると言われている。「少子高齢化の問題が顕在化するのはまだ先」などとのんびり考えている人も多いだろうが、25年はすぐそこだ。
では2040年は、どんな年になるだろう。その頃日本は高齢者人口(65歳以上)がピークを迎え、介護需要が高まる 85歳以上の人口は15年から倍増の1,000 万人超となり、75歳以上の単身世帯は15年の約1.5 倍となる。一方、15~64歳の生産年齢人口は減少しているから、サービスの提供や地域の経済活動が大きく制約されることになる。
それだけではない。これまで集中的に整備してきたインフラの老朽化が進行しているから更新が必要になるが、維持管理・更新のために必要な人材さえ減少している。
また、都市部では空き地、空き家の増加が進行している。
その一方で、IoTなど技術が進展し、あらゆるモノと人が即時につながる時代になっているだろうし、個人の生活をみれば、ライフスタイルや価値観は一層、変化、多様化しているだろう。
こうした社会の劇的な変化を前提に、地方制度調査会が先ごろ「2040 年頃から逆算し顕在化する諸課題に対応するために必要な地方行政体制のあり方等に関する答申」を安倍首相に提出した。
答申は「地方行政のデジタル化」「公共私の連携」「地方公共団体の広域連携」「地方議会」の4つの項目で対応策を示している。具体的な内容は答申に譲るが、基礎的自治体、つまり市町村の広域連携を進め「住民の生活機能の確保、地域の活性化・経済成長、災害への対応、地域社会を支える次世代の人材の育成、さらには、森林や農地の保全、持続可能な都市構造への転換、技術やデータを活用した都市・地域のスマート化の実現などのまちづくり」といった行政課題に対応することの必要性を指摘している。
また、都道府県も市町村の補完・支援の役割を強化するほか、大規模災害への対応や産業施策・観光施策、地域づくりなど、都道府県の区域を越える共通の行政課題に対し、都道府県間の協力体制を構築することの必要性を強調している。
新型コロナウイルス感染症への対応でも「新たな日常」を作ることが喫緊の課題となっているが、2040年問題でもこれらをリスクと捉えるのではなく、柔軟に対応できるような社会システムをデザインし直す好機と捉えるべきだ。
(terracePRESS編集部)