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2018.09.15

それにしても空疎な石破氏の経済政策

自民党の総裁選がスタートした。憲法改正が争点の一つと言えるが、国民は経済政策や社会保障にも大きな関心を持っている。しかし、残念なことだが、石破氏が提示している経済政策は具体性がほとんどなく、空疎なものにとどまっている。

10日に行われた所信発表演説会で石破氏は「私がやりたいのは経済再生だ」と強調。その上で「その核は地方創生だ」として地方経済の活性化の必要性を訴えた。もちろん、「国民一人一人の所得を上げなければならない」などと述べたが、それも地方創生を行うことで実現するという。

 

地方創世の必要性は当然のことであり、理解もできるが、その具体策は最後まで判然としない。演説会では「地方、中小企業、農林水産業の伸び代を最大限伸ばすためにバラバラな会議を一元化し、司令塔の機能を作る」と述べたのだ。会議を一元化すれば地方の創生が一挙に進むなど、誰も思わないだろう。

演説会という限られた時間の中で、政策をすべて紹介することなど不可能なため、こうした抽象的な言葉で説明したのかもしれない。

 

では、石破氏の掲げている政策がどうかというと、冒頭で「都市の豊かさの地方への波及頼みの発想から脱却し、地方創生を日本経済の成長戦略のど真ん中に位置付け、伸び代の大きい地方経済の生産性向上という成長のエンジンに点火することにより、魅力ある産業でイノベーションを起こす地方経済を実現する」としている。

 

地方は現在、人口の高齢化が急速に進み、人材も都市へと集中している。しかし、そうした中でも、魅力ある産業、企業が出現する可能性はあるだろう。実際、オンリーワンで国際的な企業も地方に存在する。

しかし、現実は、マクロの経済がしっかりしないと地方は疲弊してしまうのだ。議論を単純化すれば、日本車が売れれば、自動車メーカーの地方の工場や下請けが活況を呈し、労働者の所得環境が向上し、消費が増え、それによって経済が拡大するのだ。

 

実際は地方も中央もないのだが、日本企業の生産性をさらに高め、AIやIoTの導入を加速化させることなどが重要なのだ。もちろんデフレからの確固とした脱却も必要だし、安倍政権が今春闘で行ったように、労働者の所得を向上させるための施策も必要だ。

 

そのようなことを行い、日本経済を拡大させながら地方経済も活性化していくようなことを考えなければ、かえって地方を苦境に直面させることになりかねない。

 

石破氏は総裁選での地方票の獲得を狙って地方重視の姿勢を打ち出したのだろうが、これでは〝贔屓の引き倒し〟になりかねない。順序が違うのだ。

 

それにしても「バラバラな会議の一元化」には驚かされる。石破氏は政策の中で▽「東京一極集中の是正(国の機関の一部移転、本社機能の移転など)▽地方の個性や自主性、経営力向上を担保する財源の充実や補助金・交付金制度の見直し▽地方の財源拡充による地方の自主性の醸成―なども盛り込んでいる。しかし、地方の創生、活性化を基軸に据え、日本経済のエンジン役にするというのなら、この程度の従来からある地方と中央政府の関係の見直しでは到底、不可能だろう。

 

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