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2021.01.06

〝医療崩壊危機〟の裏側にあるもの

新型コロナウイルス感染症の感染拡大で、東京、神奈川、千葉、埼玉の首都圏1都3県に対し、再度の非常事態宣言の発令となった。感染防止と経済の両方のバランスを取りながら新型コロナ対策を進めてきた政府が一歩踏み出したと言える。一部からは医療崩壊などを懸念する声も出たが、医療体制の整備を進めてきた自治体の対応も露わになった。

 

神奈川県の黒岩知事は1日、新型コロナウイルスの感染が急速に拡大していることについて「入院が必要な患者を受け入れられなくなる医療崩壊が間近に迫っている」と述べている。

こうした認識を基に1都3県の知事は2日、西村経済再生担当相に「1都3県は、年末年始、新型コロナ感染症の急拡大が続いており、感染爆発の瀬戸際と言える。医療提供体制は極めて逼迫し、通常医療にも大きな影響を及ぼす危機的な状況」と記載した緊急事態宣言の発令を求める要望書を手渡している。

また大阪府では3日、同時点の重症者数が過去最多の169人に達し、重症者用の病床使用率が71.6%となっている。

 

では、なぜここまで医療体制が逼迫する事態になったのか。政府は昨年4月に策定した経済対策で、医療提供体制の整備などの都道府県の取り組みを包括的に支援するための「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金」を創設。都道府県が病床や人工呼吸器、人工肺、医療従事者などの医療体制確保や、軽症者などの医療機関以外の療養場所などの確保を促進するスキームが整備されている。

 

都道府県はこのスキームで病床などを確保することになったのだが、実際の病床数はどうだったのか。

大阪府の場合、5月上旬で確保していた病床数は1,137で、このうち重症者用は188だったが、12月下旬時点で病床数1,542、うち重症者用397となっている。神奈川県の場合は、5月上旬時点で病床数1,296、うち重症者用89だったのが、12月下旬段階で病床数1,939、うち重症者用200。東京都は、5月上旬が病床数3,300、重症者用400で、12月下旬に病床数4,000、重症者用500となっている。

 

重症者用をみれば、5月からの半年以上の期間で、大阪府は209、神奈川県は111、東京都は100床増えていることになる。

しかし、これはウイルスの活動が活性化する冬場になっても現在のような〝第3波〟が到来すると予測していたとは思えない。

リスクについては過大評価するのが危機管理の鉄則だが、東京都に至っては、病床数が700、重症者用が100床増えているに過ぎないのだ。

 

新型コロナ医療に携わる医師や看護師が献身的な努力をしていることは間違いない。しかし、こうした自治体が春先から夏場を経て現在に至るまで、医療体制の強化をしていたと言い難いことは、この病床数の推移を見ても明らかだ。〝医療崩壊の危機〟というが、それを招いたのは自治体にも責任がある。

 

(terracePRESS編集部)

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