再度の緊急事態宣言は1都3県の失敗?
菅首相は4日の年頭記者会見で、東京、神奈川、千葉、埼玉の首都圏1都3県を対象とした再度の緊急事態宣言に向けて検討に入ることを表明した。新型コロナウイルス感染症の新規患者が3000人を超え、重症者数も高止まりしている中で、菅首相自身も「非常に厳しい状況と認識している」と表明した。しかし、今回の緊急事態宣言は前回と異なり、飲食店の営業時間の短縮要請などが中心となる見込みだ。
菅首相は会見で「12月の人出は多くの場所で減少したが、特に東京と近県の繁華街の夜の人出はあまり減っていなかった。昨年以来、対策に取り組む中で判明したことは、経路不明の感染原因の多くは飲食によるものと専門家が指摘している。したがって、飲食でのリスクを抑えることが重要だ」と指摘し、その上で「1都3県について、改めて先般、時間短縮の20時までの前倒しを要請した」と述べている。
首相が「改めて」と指摘したように、1都3県はこれまで、国の営業時間短縮の前倒し要請に積極的に対応してこなかったのだろう。
こうした1都3県の対応について、首相は記者会見で「北海道、大阪など時間短縮を行ったところは結果が出ている。東京といわゆる首都3県においては、三が日も感染者数は減少せず、極めて高い水準だ。1都3県で全国の半分という結果が出ている」と述べている。
大阪府は11月27日から大阪市内の北区、中央区の全域を対象に、接待を伴う飲食店や酒類を提供する飲食店などを対象に午後9時までの営業時間短縮を要請。期限切れとなる12月15日には期間を2週間延長し、対象地域も大阪市全域に拡大した。
これに対し、東京都などは午後10時までの営業時間短縮要請にとどまっていた。この取り組みの差が、菅首相のいう「結果」となって表れているのだろう。
実際、大阪府の吉村知事は緊急事態宣言について「大阪では感染の急拡大はなんとか抑えられている状況。今の段階において要請するつもりはない」と述べている。
首相が指摘したように「経路不明の感染原因の多くは飲食によるもの」だとすれば、この営業時間の1時間の違いは大きい。午後10時まで酒食が可能であれば、アルコールも一定程度飲むことができ、それに伴い大声で会話することにもなるだろう。
もちろん、こうしたことは1都3県も分かっていただろう。午後9時までとした大阪府の例もあるし、なによりこれまで国が一層の営業時間短縮に取り組むよう要請していたのだ。そういう意味では、今回の事態は1都3県の不手際だったとも言えるだろう。
首相は会見で緊急事態宣言の内容について「飲食の感染リスクの経験を実効的なものとするために、内容を早急に詰める。さらに、給付金と罰則をセットにして、より実効的な対策を取るために、特措法改正案を通常国会に提出する」と語っている。
現在の日本では、国と自治体は上下・主従ではなく、対等・協力の関係とされ、新型コロナ対策だけでなく多くの分野で自治体が主導して政策を実行する仕組みとなっている。それだけに、自治体の責務は大きい。
(terracePRESS編集部)