「グリーン成長戦略」は日本の未来の航海図
政府は昨年末「2050 年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定した。同10月に菅首相が「2050 年カーボンニュートラル」を目指すことを内外に宣言したことを受けたもので、成長戦略は環境と経済を両立させる今後の日本の経済社会を構築するための指針となる。日本が今後とも成長できる国になるか、衰退するのか、それはグリーン成長戦略が実行できるか否かにかかっている。
成長戦略は、グリーン成長戦略の意義について「温暖化への対応を、経済成長の制約やコストとする時代は終わり、国際的にも、成長の機会と捉える時代に突入したのである。従来の発想を転換し、積極的に対策を行うことが、産業構造や社会経済の変革をもたらし、次なる大きな成長に繋がっていく。こうした『経済と環境の好循環』を作っていく産業政策が、グリーン成長戦略である」と指摘している。
しかし同時に「『発想の転換』『変革』といった言葉を並べるのは簡単だが、カーボンニュートラルを実行するのは、並大抵の努力ではできない」とも述べている。
事実、成長戦略では、2050年のカーボンニュートラルの実現について「あらゆる政策を総動員しても、全ての電力需要を100%再エネで賄うことは困難と考えることが現実的。多様な専門家の意見交換を踏まえ、2050 年には発電量の約 50~60%を太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス等の再エネで賄うことを、議論を深めて行くに当たっての一つの参考値として、今後の議論を進める」としている。同時に水素・アンモニア発電を10%程度、原子力・CO₂回収前提の火力発電を30~40%程度とすることも参考値として示している。
こうした数字は今後の技術開発の動向にも左右されるが、重要なことは産業界がこれまでのビジネスモデルや戦略を根本的に変えていき、政府がそれを強力に支援するということで、そのための指針となるのが、「グリーン成長戦略」ということになる。
中でも、国民の関心が高まるのは自動車だろう。戦略では「遅くとも 2030 年代半ばまでに、乗用車新車販売で電動車 100%を実現できるよう、包括的な措置を講じる」としており、あと15年程度で 新たに販売されるのが電気自動車、燃料電池自動車、プラグインハイブリッド自動車、ハイブリッド自動車のみになることを描いている。
生活に密着した自家用車で純粋なガソリン車、ディーゼル車などの販売が終了するとなれば国民生活にも大きな変化が生じることとなる。
また住宅・建築物分野も「家庭・業務部門のカーボンニュートラルに向けて鍵となる分野であり、一度建築されると長期ストックとなる性質上、早急に取り組むべき分野である」とされており、今後、良質な住宅の供給によって生活の質を向上させていくことになる。
成長戦略では、こうした自動車、住宅以外の各産業についても実行計画が盛り込まれている。予算や税、金融、規制改革・標準化などといった様々な政策を総動員することで、民間企業が保有する 240 兆円の現預金を積極的な投資に向かわせることで「2030 年で年額90兆円、2050年で年額190兆円程度の経済効果が見込まれる」という。まさに日本の経済成長のカギが、このグリーン成長戦略と言えるだろう。
(terracePRESS編集部)