国際的にみれば雇用環境を守ったのが日本
厚労省が先ごろ発表した2020年平均の有効求人倍率の下げ幅が45年ぶりの大きさとなったほか、総務省の労働力調査でも20年平均の休業者数は過去最大となり、新型コロナウイルス感染症の拡大で、20年の雇用情勢は大幅に悪化したことが改めて分かった。しかし、政府の財政支出の拡大などの効果で、世界的にみれば経済の落ち込みをぎりぎり抑えていることも事実だ。
厚労省によると2020年平均の有効求人倍率は1.18倍で前年比0.42ポイントの低下となった。下げ幅はオイルショックの影響が出た1975年以来45年ぶりの大きさを示した。働く意欲のある有効求職者数は6.9%増の182万人だったのに対し、企業からの有効求人数は21%減の216万人だった。
また、総務省によると、20年平均の完全失業率は2.8%で、こちらは11年ぶりの悪化となり休業者数は過去最大となった。
休業者は昨年春の緊急事態宣言の発令後に大幅に増加し、4月に597万人とピークとなり、6月まで高水準が続いた。緊急事態宣言が経済に大きく影響し、雇用の悪化を招いたことを裏付けた。
政府は感染対策と経済の両立を図ることを目標にしたが、感染対策に全力を挙げつつも、可能な限り経済を回すことは、雇用を守り、国民の生活を守るという観点からだ。このため1月の緊急事態宣言を11都府県に限定したのも、こうした冷静な判断からだろう。
ところで、このような日本の雇用状況は世界的にみるとどのような評価となるのだろう。独立行政法人「労働政策研究・研修機構」が完全失業率の国際比較統計を公表している。
各国の完全失業率(季節調整済み)をみると、日本(12月)が2.9%だったのに対し、スペイン(11月)16.4%、イタリア(11月)8.9%、フランス(11月)8.8%、米国(12月)6.7%、英国(10月)5.0%、韓国(12月)4.6%、ドイツ(11月)4.5%となっており、軒並み日本より高い失業率を示している。
2020年の最大値を見ると、日本は10月の3.1%だったが、スペインが7月の16.9%、米国が4月の14.8%、イタリアが7月9.8%、フランス7月9.4%、英国10月5.0%、韓国12月4.6%、ドイツ8-11月4.5%などとなっている。
確かに日本の雇用状況は悪化したことは間違いないが、このような国際比較をみれば、日本の雇用環境の悪化は一定程度抑え込んだことは事実だ。
政府は20年度予算の補正予算で約27兆円、2次補正予算で約31兆円の追加財政支出を行い、先ごろ成立した3次補正予算でも約19兆円を追加支出する。これらの追加支出には国土強靭化など直接的には新型コロナの感染防止には関係ない予算も計上されているが、それらの支出により雇用が確保され、それが消費に回る。そうした施策によっても雇用の悪化を防いでいることも事実なのだ。
(terracePRESS編集部)