21年度予算が決定づける日本の今後
2021年度予算案の審議が本格化している。来年度予算は新型コロナウイルス感染症の拡大防止はもとより、足元の日本経済の再生や地域経済の活性化、デジタル社会の構築、グリーン社会の実現が進むかどうかの分水嶺にもなる。菅政権は予算案に多くの〝次の一手〟を盛り込んでおり、今後の日本の方向性を示す重要な予算となっている。
2021年度予算案は一般会計歳出・歳入総額が106兆6097億円で、当初予算としては過去最大となる。20年度予算は3次にわたる補正を含めると175兆6878億円と過去最大規模となったし、東日本大震災が発生した2011年度予算も4次にわたる補正予算も合わせて107兆5105億円まで膨らんだが、当初予算の段階で約107兆円もの規模になったのは過去に例がない。
このような規模になったのは政府が21年度予算を「感染拡大防止に万全を期しつつ、
デジタル社会やグリーン社会、活力ある地方、少子化対策など全世代型社会保障制度など中長期的な課題にも対応する予算」と位置付けているからだ。
足元の感染拡大防止は措くとして、重要なのは「中長期的課題」に対応するための予算案になっているということだ。
少子高齢化の急速な進展や地域活力の減退、国際間競争の激化など、日本を取り巻く内外環境は、極めて厳しいものとなっている。そうした困難な状況にある中で新型コロナウイルスが発生し、その対応に人的、財的資源を投入するわけだから、中長期的課題に挑むのも容易ではない状況だ。
その中で予算案では「デジタル社会」「グリーン社会」「活力ある地方」「少子化対策」など日本の隘路を切り拓くためにメリハリをつけたものとなっている。
具体的にいえば、デジタル関連では、9月に官民の高度専門人材を結集し500人規模のデジタル庁を新たに設置し、総合調整機能を持たせてデジタル社会の構築を促進する。
また、グリーン社会の構築に向かっては「野心的な二酸化炭素の排出削減に取り組む企業」に対する成果連動型の低利融資制度を創設し、今後3年間で1兆円の融資規模を実現させ、ESG投資の呼込みや再エネ・省エネなどの研究開発・導入を支援する方針だ。
さらに、東京一極集中に風穴を開けることに取り組んでいるのも特色で、地域活性化の自主的、先導的な取り組みを支援する1000億円の「地方創生推進交付金」の活用で移住支援事業を拡充するとともに、企業と自治体のマッチング支援を行う「地方創生テレワーク推進事業」などで、地方への人や仕事の流れを拡大することを目指している。
また、公共事業も6兆695億円を確保し、新たな水害対策として流域全体での治水対策や新技術を活用した老朽化対策など、防災・減災、国土強靱化への重点化も推進する。
以上のように2021年度予算案は日本の中長期的課題に取り組む予算となっている。一般歳出も約67兆円と当初予算ベースで過去最大だが、公債金収入も43.6兆円規模となっている。野党は批判一辺倒だろうが、税収が低迷している中で日本の行く末を方向付けるという制約の中で、日本の将来を託せる予算案といえるだろう。