農業活性化でSNSの活用やローカルフードビジネス創出
農水省は2021年度から、国産農林水産物の消費拡大のための新たな国民運動や、地域の食と農に関する関係者が参画するプロジェクトを始める。菅政権は農林水産業を地域の重要な産業と位置づけており、食や環境を支える農業・農村への国民の理解の醸成をしたり、新たなフードビジネスを開発したりする。
菅首相は今国会の施政方針演説で「主食用米から高収益作物への転換、森林バンク、養殖の推進などにより、農林水産業を、地域をリードする成長産業とすべく、改革を進めます。美しく豊かな農山漁村を守ります。」と表明している。
しかし、農林水産業の活性化には国民の理解を深めることも不可欠。このため、「食」の重要性が再認識される中で、消費者が日本の食や農林漁業に対する理解を深めたり、触れる機会を創出したりすることを目指した新たな国民運動を実施する。2021年度予算案で4億円を計上し、2020年度第3次補正予算も活用しながら、運動を展開する。
具体的には、子どもから大人まで幅広い世代に向け、農林漁業者による地域の様々な取組や地域の食と農業の魅力を、メディアやSNSなどを活用して発信する。
同時に、農業・農村に対する国民の理解を醸成するため、地域の農業・農村の価値や、地域が生み出す農林水産物の魅力を伝える交流イベントなどを実施する。具体的には、オンラインの収穫体験や、農村に滞在して農業体験などを行う農泊、農産物の販売フェアなどのイベントが想定されている。
食や生産者のことを知ってもらうことで、国内農業への理解を深め、食料自給率の向上にもつなげたい考えだ。
一方、地域の農林水産物が地域産業の中で有効活用されるように、地域の食と農に関する多様な関係者が参画した地域食農連携プロジェクト(LFP)を構築する。
地域の関係者が自発的に企画・実行する持続的なビジネスの創出支援を目的とし、2021年度予算案には約2億円を計上している。
LFPは、地域の特産物や食材など農林水産物を活用した持続的なローカルフードビジネスを創出することを目的に、地域の農林漁業者や食品関連企業などの関係者がネットワークを構築するもので、2022年度までに全都道府県での取り組みを目指す。
事業ではLFPの形成や研修、試作品製造やデザイン作成などのプロジェクト経費などを支援し、地域資源を活用したローカルフードビジネスの創出を図る。
生産者の高齢化や担い手の不足など日本の農林水産業は隘路に直面している上、新型コロナウイルス感染症拡大の影響も直撃している。しかし、日本の農林水産品はアジアを中心に海外でも評価されており、輸出品として大きな可能性もある。農林水産業の活性化にはまず国民が理解を深めることが重要だ。
(terracePRESS編集部)