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2021.04.28

立ち遅れる日本の緊急事態対応

新型コロナウイルス感染症の感染防止策で、課題の1つとなっているのが病床の確保だ。民間病院の病床がなかなか確保できず、医療逼迫の原因ともなっている。菅首相は23日の会見で、医療問題を含め緊急事態に備えた特別措置の必要性を指摘し、今後、法改正作業などを進める考えを明らかにした。新型コロナにより露呈したこうした問題は、緊急事態に対する立ち遅れを示している。

 

菅首相は会見で、医療機関に対する政府の権限の弱さなどについて「医療関係者に対しての政府の権限というのは、現在、お願い、要請ベースでしかないというのが現実だ。ワクチンについても、海外は国内治験を必要としない国がほとんどで、日本は国内でも治験をやる仕組みになっている。こうした緊急事態に対しての対応の法律を改正しなければならないと痛切に感じている」などと述べた。

 

国公立病院などは病床の提供に応じても、民間病院にはなかなか要請に応じてもらえなという現実がそこにはある。それも民間病院が国の予算で支援措置を受けていても、そのような情けない状況なのだ。日本医師会も、会長が記者会見で政府批判を繰り返しているが、政府の対応を批判するのはいいとしても、まずは民間病院の病床確保を促進することが、こうした状況下の日本医師会の役割であるはずだ。

 

要請ベースでしか対応できないことは、それが法律の不備と言えば、もちろんそうなのだ。緊急事態では私権を一定程度制限し、ある期間、政府に緊急の対応を委ねることができるようにすることが必要だが、何かと言えば「反民主主義」とか「独裁」に道を開くなどとの批判が出る日本では、国が直面する緊急事態に平素から議論し、備えるということが難しい。

 

現在、憲法改正論議が進んでいるが、自民党では①9条への自衛隊の明記②緊急事態条項の創設③参院選・合区解消④教育の無償充実-の4項目を掲げている。

このうち緊急事態条項は「大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定を待ついとまがないと認める特別の事情があるときは、内閣は、法律で定めるところにより、国民の生命、身体及び財産を保護するため、政令を制定することができる」としている。

 

新型コロナウイルス感染症は、未知のウイルスが引き起こした緊急事態だが、その可能性は、新型コロナのような疫病の拡大だけでなく、大規模災害、日本への武力侵攻、大規模なテロ活動などさまざまなケースが想定される。そうした日本にとってのクライシスに対応できる体制整備が必要だ。

 

菅首相の問題提起は、病床の確保や薬の承認に関してのことだが、憲法改正と併せて、国の緊急事態への備えを抜本的に議論すべきだ。それが国民の生命や財産を守ることにつながる。

 

(terracePRESS編集部)

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