自民党が棚田地域振興で法案
自民党は先ごろ、棚田地域振興法案(仮称)の骨子を策定した。野党の賛同を得て、来年の通常国会に議員立法で法案提出する方針という。
棚田は、山間などの傾斜地にある稲作地のこと。傾斜がきつく耕作単位が狭くても、なんとか耕作をしようと、狭いながらも水平に保たれた田が規則的に集積した一帯のこと。
中山間地などでよく目にすることができる光景で、棚田が一望の下にある場合は千枚田とも呼ばれている。棚田と同じように傾斜地を段状にした畑は、段々畑という。いずれにしても、山間地が多い日本の国土を有効利用しようと先人が考えた日本の原風景だ。
「棚田百選」などもあり、水が張られた春の田植え時期や、稲穂が風に揺れる8月~9月の収穫時期は、目を奪われるほどの田園風景を見ることができる。
指摘するまでもないが、日本の農業は高齢化が進み、基幹的農業従事者の80%が60歳以上となっている。あと10年もすれば、日本の農業のほとんどを高齢者が担うことになる。
当然のことながら、生産者の高齢化に伴って棚田の維持も年々、困難になっている。すでに1970年代頃から耕作放棄が始まり、現在残っているのは60%以下にまでなっており、これからはさらに棚田が消えると考えられている。このため、農水省の各種事業を活用したり、各地で棚田保存プロジェクトなどが行われたりしているが、棚田保全の決め手がないのが現実だ。
今回の棚田地域振興法案では、各地で市町村も参加した協議会を設立し、協議会が主体となって棚田地域の地域振興を図る。国は「棚田地域振興コンシュルジュ」を通じて協議会に対して情報提供や助言を行うほか、各府省の関連施策を総動員して地域振興の枠組みを作るという。
棚田を保全するための地域振興は、日本にとって待ったなしの課題となっている。こうしたことに一つ一つ取り組むのが政党の役割だろう。そういう意味では、今回の自民党の棚田地域振興法案(仮称)は非常に評価できるだろう。
しかし、これからはどのように実効性を持たせるのかがカギとなる。地方の振興は、都市住民の理解を得られないとなかなか前に進めない。実効性を持たせるためには、都市住民を含めて、このような取り組みを行っていることを知ってもらう必要があるだろう。